映画『ガンパウダー・ミルクシェイク』感想 アイデア、キャラクターは文句なし 極彩色の世界を生きる女たちの矜持(ネタバレあり)

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あらすじと作品情報など

ネオンきらめくクライム・シティ。暗殺組織に所属する凄腕の殺し屋サムは、ターゲットの娘エミリーを匿ったせいで組織を追われ、命を狙われてしまう。次々と送り込まれる刺客たちを蹴散らしながら夜の街を駆け抜けるサムは、かつて殺し屋だった3人の女たちが仕切る図書館に飛び込む。女たちはジェーン・オースティンやバージニア・ウルフの名を冠した武器を手に、激しい戦いへと身を投じていく。

原題:Gunpowder Milkshake/2021年/アメリカ/114分
監督:ナボット・パプシャド
出演:カレン・ギラン/レナ・ヘディ/カーラ・グギーノ/クロエ・コールマン/アダム・ナガイティス/ミシェル・ヨー/アンジェラ・バセット/ポール・ジアマッティ
引用:映画.com

ざっくり概要と予告編(ネタバレなし)

監督はイスラエル出身のナボット・パプシャド。同じイスラエルのアハロン・ケシャレスと共同で監督した2013年のスリラー『オオカミは嘘をつく』が、タランティーノ監督から絶賛されたそうです。ずいぶん話題になったらしいのですが、全然知らなかった。

で、それだけで観ない理由が見つからないくらい心引かれたわけなのですが、さらにキャストも魅力的。カレン・ギランもいいけど、レナ・ヘディ、アンジェラ・バセットにミシェル・ヨー…って、なにこの素敵なお姉様大集合な感じ。

この布陣でアクションものとなれば、どうしたって期待は高まらざるを得ない。そんなわけで混雑が嫌いな私にしては珍しく、わりと公開されてすぐ、いそいそと劇場へ向かったのですが…。

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感想(ネタバレ注意)

※以下ネタバレあります。



キャラクターは魅力的、アクションにも工夫あり

観る前から予想していた通り、キャストはとてもよかったです。長身でモデルのようなスタイルなんだけど、顔立ちはちょっと幼くてまなざしが不安そう、複雑な境遇のサムというキャラクターにぴったりのカレン・ギラン。そんな彼女と対照的に「8歳と9ヶ月」なのに自信たっぷりのエミリーを演じる、演技力凄まじいクロエ・コールマン。まずはこのふたりのコンビが完璧にはまっていたこと、そして若い彼女たちをサポートするお姉様方は常に抜かりのない面々なので、それでひとまず料金分は楽しめたという感じ。

ファッションに感じられたこだわりも気に入ってます。これはひときわ目を引く、サムのオレンジのスカジャンにサンリオチックなイラスト入りピタピタTシャツという90年代ライクなルックも好きなんですが、他の女性たちも猛烈にかっこいいパンツスタイルで。かといって、マッチョなわけではないんですよ。サラ・コナーとか、リプリーじゃない。この微妙なさじ加減が伝わるかどうか自信がないんですが、わたしはそもそも女性、男性という線引きが意識されすぎず、その上で個性の感じられるユニセックスな雰囲気にとても居心地の良さを感じるようです。同じような心地よさは、たしか『キャプテン・マーベル』を観たときにも感じたような気がします。

そんな彼女たちが見せるアクションにも、出色の新味がありました。印象的だったのは中盤、病院でサムが「両腕が使えない」状態で「キャスター付きの椅子に固定」されて、男3人を相手にする場面。男たちも負傷している状態なんですが、これがちょっと観たことのない戦い方で。撮影もむやみにカメラを動かさず、アクションをしっかり見せていていい感じ、コミカルさもほどよくて楽しかったです。

そこから続いてカー・チェイスになるんですが、やっぱりここでもサムはまだ両腕が使えないんですよね。で、どうするのかというと、サムの膝に乗ったエミリーがハンドルを握り、サムが後ろからアクセルとブレーキを担当しつつハンドル操作を指示。「右」「左」「バックギア」って…車の運転ってそんな単純じゃないと思うんですが(ハンドルさばきが極端でも、アクセルとブレーキの加減でなんとかなるのかな)、これくらいの「ゆるさ」が、この映画の世界観にはぴったりはまっていた気がします。

オマージュに溢れた世界観、これを楽しめるかどうかはキモかもしれない

『パルプ・フィクション』な50年代ぽいダイナーにはじまり、『キル・ビル』っぽい和洋折衷風味、バトル不可ゾーンの存在など『ジョン・ウィック』的裏社会システムに、ゴシックな風情の図書館風倉庫…は、アイデアは違うんだけど『ジョン・ウィック3』の図書館バトルがなんとなく被ってしまい、さらには『AKIRA』感漂う90年代近未来SFチックな街並み、『キングスマン』『グロリア』、マカロニ・ウエスタン、香港映画…。

観賞からわりと経ってもざくざく出てくる、てんこ盛りなオマージュの数々。これはたしかに観ていて楽しい部分でもあるのですが、正直あまりにも直球で、私の感想としてはちょっとくどかったかも。特にオリジナルの味わいが濃いタランティーノ感や、ジョン・ウー風味、ていうか、タランティーノがそもそもジョン・ウーやマカロニ・ウエスタンにかなり影響を受けているわけで。タランティーノがすごかったのは、それでも「タランティーノ味」をモノにしてきたからなんですよね。『ジョン・ウィック』にしても、『殺しの烙印』とか思い出す感じの元ネタがあるけど、やっぱり強く個性があったわけで。

ガンパウダー・ミルクシェイク

(C)2021 Studiocanal SAS All Rights Reserved.

その「味」の部分が、この作品ではそこまで感じられなかった…いや、上にも書いたように、作中いいシーンはたくさんあったんです。にも関わらず、オマージュが盛りすぎ、わかりやすすぎでノイズになってしまい、なんだか醒めてしまうところがあったのです。これはもう完全に好みの問題なのでなんとも言えないのですが…ここでハマったかハマらなかったかは、作品の評価にかなり影響が出るポイントかもしれません。

ドラマとしてはやや散漫な印象

盛りすぎな部分はストーリーにもありました。そもそもサムが、母親との確執、仕事での大物とのトラブル、エミリー保護と抱えている問題が多く、さらにそれらのエピソードがいずれもメインばりの存在感。世界観や設定も若干の説明が必要なので、前半はとてももたついていました。さらに後半はテンポこそ盛り返すものの、ドラマ部分はあまり深く掘り下げられなかったので、なんだか鑑賞後は消化不良な感じに。ここはコミックっぽい世界観や、激しいんだけどリアルではないアクションのノリに合わせて、もっとシンプルかつ軽快にしてもよかったのかもと思うところです。

キャストが多すぎるのも雑然としてしまう原因になっている気がするのですが…これについてはほんと、男性陣も含めてみんな魅力的なんですよね。本当なら女性側のキャラクターはサムとお母さんだけでもよかったのかもしれない。女2人で男たちに立ち向かうという縛りなら、それはそれで工夫された、かっこいいアクションが堪能できた気がするんですよ。でもなー、でもやっぱり図書館勢はスペシャル感がありましたよね。この設定とキャストを思いついたら、やりたくなるのはすごくわかるんですけれども。


まとめ

わりと難癖をつけてしまった気がしますが、全然嫌いじゃありません。なぜならやりたい方向性がはっきりしているし、そのベクトルは私のかなり好きなテイストだし。アイデアもないよりはあるほうが断然いい。続編も決まっているようなので、公開されたらもちろん観に行きます。次は図書館メンバーがもうちょっと観たい。特に今回も一人だけ明らかにキレッキレだったミシェル・ヨーのアクション、じっくり観たいです。そしてもうちょっと全体的にバカバカしくなると、さらに好きな感じになるような気がします。

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