映画『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』感想 ひたすら楽しいライトなファンタジーコメディ(ネタバレあり)

※本ページはアフィリエイトプログラムを利用しています。
※画像をクリックするとAmazonの商品ページに移動します。
スポンサーリンク

あらすじと作品情報など

さまざまな種族やモンスターが生息する世界、フォーゴトン・レルム。盗賊のエドガンと相棒の戦士ホルガは、ある目的のために旅に出る。これまでにもさまざまな修羅場をくぐり抜けてきた彼らだったが、今回の冒険は一筋縄ではいきそうにない。そこで、魔法使いサイモンとドルイドのドリック、聖騎士のゼンクを仲間に加え、パーティを組む。ダンジョンに立ちはだかる困難や手ごわい敵の数々、そして高難度のクエストを乗り越えていくうちに、彼らは全世界を脅かす巨大な悪の陰謀に対峙することになる。

原題:Dungeons & Dragons: Honor Among Thieves/2023年/アメリカ/134分/配給:東和ピクチャーズ
監督:ジョナサン・ゴールドスタイン/ジョン・フランシス・デイリー
出演:クリス・パイン/ミシェル・ロドリゲス/ジャスティス・スミス/ソフィア・リリス/レゲ=ジャン・ペイジ/クロエ・コールマン/ヒュー・グラント/デイジー・ヘッド/イアン・ハンモア
引用:映画.com

ざっくり概要と予告編(ネタバレなし)

『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(以下『D&D』)は1974年にアメリカで発売されたテーブルトークRPG(以下「TRPG」)。『指輪物語』的なファンタジー世界を舞台として、会話とサイコロの出目でストーリーを進めていくスタイルのアナログゲームで、いわゆるコンピューターゲームの1ジャンル「RPG」も、このゲームが元になって誕生しました。

大人気となった『D&D』は、世界観のみを共有すればあとは無限、という拡張性の幅広さもあって、アニメや小説などさまざまな媒体で展開されました。映画も、2001年に『ダンジョン&ドラゴン』が制作され、興行的には失敗だったものの、やはり一定の需要は見込めたのか、その後2005年に『ダンジョン&ドラゴン2』、2012年に『ダンジョン&ドラゴン3 太陽の騎士団と暗黒の書』とシリーズ化。シリーズが一応の幕引きをした後もすぐにリブートの企画が持ち上がり、紆余曲折を経たもののこのたびようやく完成したのが、この『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』ということなのですが。

聞けば本作、もともと企画を仕切っていたのは『LEGO® ムービー』クリス・マッケイだったそう。諸般の事情で降板することとなり、それを引きついだのが、今回監督を務めたジョナサン・ゴールドスタインと、ジョン・フランシス・デイリー。このおふたりと言えば『お!バカんす家族』『ゲーム・ナイト』など、規模は小さくともわりと安定して楽しい作品をコンスタントに制作し続けているイメージだし、MCUの超大作スパイダーマン:ホームカミングでも脚本に関わっているというポテンシャルの高さ。ていうかそもそも本作、プロデューサーとしてジェレミー・ラッチャム、編集には ダン・レーベンタールが名を連ねており、これってほぼMCU組(しかもすごく魅力的だった頃の)。

正直、はじめて予告編を観た時点ではまったく期待していませんでした。でもそんなこんなで周辺情報を仕入れた後は、予告から感じた不穏は気のせいと判断。さっそく劇場へと足を運んだのですが、いやー、おもしろかった、超おもしろかった。おそらくこれまで2人が監督として手掛けてきた作品の中ではかなり規模が大きくなったはずですが、全然気負っている感がないし、世界観が広がっても内容はこれまでと変わらず得意の掛け合いと伏線の面白さで牽引。下ネタや恋愛も封印して、強いて言えばメインとなる父娘のドラマも過度に湿っぽくない。細かなところでTRPGであることを存分に生かしつつ、さらには、少なくはなくも潤沢とは言えないだろう予算も使いどころをしっかり心得(クリーチャーとか)、まさに観たいものをしっかり観せてもらったという感じ。

ちなみにキャストは、パーティのリーダー的存在、詩人のエドガンクリス・パイン(『スター・トレック』シリーズ)、エドガンの相棒、女戦士ホルガミシェル・ロドリゲス(『ワイルド・スピード』シリーズ)、あと若手から、気弱魔法使いサイモンジャスティス・スミス(『ジュラシック・ワールド/炎の王国』)、ドルイドのドリックソフィア・リリス(『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』)。さらにここ数年、唐突に意外な個性を放つようになったヒュー・グラントも『パディントン2』に比肩するテンションで悪役を演じているほか、『ガンパウダー・ミルクシェイク』で圧倒的な演技力を見せたクロエ・コールマン(ちょっとだけお姉さんになってました!)も出演。中盤にはちょっと驚く大物スターのカメオもあって、キャスティング、なにげに豪華。そしてハマってる!

特にベテラン勢はベストアクト感さえあって、とにかく、わたし的には全方向に大満足。そして世間的にも評判がいいとなると、当然すでに続編(スピンオフ?)の企画が持ち上がっているわけで、観るなら今です!

『D&D』をまったく知らなくても問題なし、家族でもひとりでもカップルでも、人やタイミングを選ばず気軽に楽しめる作品だと思います。おすすめ!

Amazonプライムビデオ配信中。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』をプライムビデオでみる

※タイトルをクリックすると、Amazonの商品ページに移動します。
※Amazonプライム会員登録で30日間無料体験有。

感想(ネタバレ注意)

※以下ネタバレあります。



ファンタジーなのに明快な世界観

まずは冒頭、物語は雪深い僻地の監獄から始まります。そこで捕らえられているのが本作の主人公、エドガンホルガ。ここに新入りがやってくるという体で、さっくりとふたりの人となり&現状の説明がなされ、一方で、ファンタジー特有の面倒くさい説明は一切なし。それでも最低限の世界観、たとえば――この舞台がいわゆる剣と魔法の世界であり、多岐にわたる種族が共存する世界であること、等は過不足なく伝わるという無駄のなさ。さらにちょっとしたつかみのアクションもしっかり見せて、とりあえずこのオープニングだけで「できる映画」感が伝わります。

そこからエドガンの娘キーラ(クロエ・コールマン)が、かつての仲間フォージ(ヒュー・グラント)に引き取られていること、実はエドガンとホルガが捕まったのは、フォージの策略による罠だったことが判明。そうとも知らずすっかりフォージになついてしまったキーラを取り戻すため、エドガンはかつてのツテを辿ります。そうして集まるのが、ダメダメ魔法使いサイモン、サイモンの知り合いで変身能力を持つドルイド、ドリックと、パーティ4人がそろうところまでが序盤の流れとなっているのですが…。

これがとにかくサクサク進む。メインキャラクターに関わるこれまでの顛末や、「D&D」特有の種族や魔法に関する説明も、掛け合いと回想と無理のないエピソートで見せてくれるから自然だし、それぞれの個性もその過程で浮かび上がってくるという省エネ設計、複雑ではないのに情報量はじゅうぶんで、最初のテンションこそ「思ったより楽しい」だったのですが、中盤にさしかかる頃には「脚本すげー」と感嘆すら覚えました。

笑える展開とちゃんと伝わるTRPG感

その後もお話は常に「笑わせること」を基本に展開。それも子供にも分かりそうなベタなもの…たとえばキャラクターを生かしたフォージの顔芸や、シンプルに追われて逃げる等、ドタバタがメインのコントチックなものから、「知能に反応するモンスター」に無視されてしまう件をはじめとする掛け合いで聞かせる系、『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』を彷彿とさせる「知ってたらさらにニヤリとできる」ようなタイプ(でも知らなくても大丈夫)まで、とにかくパターンが多彩。さらにはTRPGがベースであることもちゃんと意識させるような「笑い」や「工夫」もきっちりあって。

というのも実はわたしは、『D&D』はまったくやったことがないんですが、『D&D』ブームのあと作られた国産TRPG『ソード・ワールド』は少しだけかじったことがあってですね、そのとき思ったのは、TRPGってやっぱり生身の人間が集まってプレイするため、コンピューターゲームのRPGに比べると、かなり想定外なことが起こりやすい…というか、基本的にプレイヤーは、ゲームの進行役、ゲームマスターの思惑の裏をかきたがる傾向があるし、それをどうコントロールするかがゲームマスターの手腕、ひいてはTRPGならではの面白さだったりするところもあったりなかったり。

ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り

(C)2022 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, DUNGEONS & DRAGONS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO. (C)2022 HASBRO.

具体的に言うと、貴重な魔法やアイテムをすごくくだらないことに使ってみたり、本来の(ゲームマスターが想定していた)方法以外の機転でピンチを切り抜けようとする、みたいなことなんですが、これ、ある時期以降のライトノベルや異世界ものの国産アニメなんかだとわりとある展開なのかな。

でもその元ネタって、たぶんTRPGだと思うんです。そして本作にも、そういう「遊び」がしっかりあって、そこはTRPG経験者ならすごく「ああっ」となるはず。さらにそれが投げっぱなしじゃなく、ラストではちゃんと本筋の伏線になっているし、キャラクター(特にサイモン)の成長を見せる伏線にもなっているから、決して内輪受けにはなっていない。よってゲームのことを知らなくても違和感なく楽しめるように出来ていて、こんなところも脚本の上手さ、そして丁寧さだなと。

笑いだけじゃない、人間ドラマもビジュアルもツボは押さえてます

とにかく笑える、楽しいというところが推しポイントの本作ですが、だからといってそれしかないのかというと、まったくそんなことはありません。むしろここまでヒットしているのだからそんなの言うまでもないことなんですが、何がいいって、やっぱりキャラクターとの親和性

たまたま悪党の財宝を前にして、ケチな盗みを働いてしまったところから落ちぶれてしまったエドガン、過去のしがらみを引き摺り続けているホルガ、自分に自信が持てず安易に流されがちなサイモン、陰キャなドリック…そんな彼らがドタバタな冒険の中で少しづつ成長、決して無敵で品行方正なスーパーヒーローになるわけではないけれど、ちょっとだけ前進するという、これって、こじんまりしているけど誰もが共感せざるを得ない物語。メインキャラクターだけじゃなく、途中で少しだけ関わるパラディン、ゼンクにしても「この人が主役でいいんじゃないの?」という完璧さの一方「真面目過ぎて融通が利かない」という裏設定でちゃんと「ダメさ」を見せてくれるし、悪役フォージまでもが自分の狭量さを自覚しているから嫌いにはなれず。エドガンの娘、キーラちゃんもきっちり子供ならではの「面倒くささ」を披露しつつ、嫌われない案配で持ち前の聡明さを発揮していて、本当に登場人物全員、どこまでも人間くさい

で、そんなキャラクターの魅力にも溢れた王道負け犬リベンジものとして、本作と「似ている」とちょいちょい並べて語られているのが『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』なんですが。この2作、もちろん通じる部分もあるにはある。けど、わたし的にはやっぱりジェームズ・ガンはトロマ出身の印象が強く、もっとバイオレントでクセが強い。キャラクターたちも大いに壮絶な過去を背負っており、そちらはそちらで決して嫌いじゃないんですが、本作のつくりはもっと万人向き職人監督ぽくて。

まずは広い層に向けて過激な暴力や下ネタは封印、笑いはあくまで、かなり小さな子供でも分かるだろうもので勝負しています。あとこれは、この監督コンビのこれまでの作品も含めて共通することなのですが、ともすればじっくり泣かせに持って行ける場面をぜったいに引っ張らない、ここぞというところほど「え、もう終わり?」と思わず前のめりになるくらいさっぱり流していくという特徴が顕著だったりして。

こうしてポイントをひとつひとつ考えていくと、本作と『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は「ダメ人間のドラマ」というところ以外、むしろ反対の要素の方が多い気がしています。そして逆にわたしが強く連想したのが2017年の『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。居残りが確定してしまったダメなティーンたちが、コンピューターゲームの世界に閉じ込められたことをきっかけに、反目し合いながらもそれぞれの(ともすれば短所ともなりそうな)個性とアイデアでピンチを切り抜けていくというストーリーは、本作にも通じる笑いとドラマがありました。だからどうというわけではないのですが、つまり本作はちびっこちゃんや下ネタ、バイオレンスが苦手な方でも全然大丈夫な内容となっていますので、その辺は安心してくださいねという話。

あとビジュアル。これも、本作はたぶん『指輪物語』や『ゲーム・オブ・スローンズ』ほどの大予算のかかった作品ではありません。すべてが「ため息がでるほど美しい!」というものではありませんが、ところどころの見せ方がとても楽しくて。こういうジャンルの映画となると、期待してしまうのはやはり現実にはありえないクリーチャーやドラゴンの造形、魔法を使うシーンのエフェクトなどですが、そのあたりのツボが完璧です。

クリーチャーについては文章であれやこれ言うより「これを見て!」という感じなんですが。

魔法に関しては、やっぱりいろいろなところで話題になっているドリックの七変化!

変身できるって聞いただけだとそんなに特別な気がしないのだけど、いろいろな生き物に変身しながら敵の元から脱出するくだりは本当に気持ちよく、でもわりと一瞬なので見終わったあと「えええ、もういっかい見せて!」ってなること間違いなしです。

それから、時間が止まる魔法っていうのもあって。SFやファンタジー映画で時間が止まることはそれほどめずらしくない気がするのだけど(「ドクターストレンジ」かなんかでもあったような)、魔法の詠唱(?)から発動まで時間と空間にちょっとしたディレイがあって、そのビジュアルがとても新鮮でした。あとはご先祖様と会える魔法とか、魔法のアイテム、ここそこ棒(だっけ?)のラストの使い方も、おもしろいしインパクトたっぷりでおもしろかったです。

また、ジャンル的にどうしても特殊効果に目が行きがちにはなりますが、ミシェル・ロドリゲスの独壇場となるアクションも見ごたえがあります。女性でありながら粉砕系の武器ぶんまわしても違和感なしの、あの説得力のある身体!ファンタジーという世界観で、全年齢に向けてバイオレンスは控えめだからこそ、そこでリアリティを持たせているって素晴らしいバランス、恋愛や下ネタなしに次いで、好感度アップのポイントとなりました。


おわりに

とにかくとても楽しくて、みんな観て!と声を大にして言いたいです。ファンタジーならではのスケールの大きさも見どころではあるけれど、掛け合いや小ネタもおもしろポイントなので、配信(おうちのテレビ)でもじゅうぶん楽しめると思います。

そしてなにより、

  • 年齢、性別を問わず誰にでもおすすめできる
  • 予備知識もほとんど必要なく、続きものでもない(今のところ)

このふたつ、すごく大事です。

Amazonプライムビデオ配信中。

『ダンジョンズ&ドラゴンズ アウトローたちの誇り』をプライムビデオでみる

※タイトルをクリックすると、Amazonの商品ページに移動します。
※Amazonプライム会員登録で30日間無料体験有。