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2025年7月後半に観た新作映画の感想を書いています。
- ストレンジ・ダーリン(なんばパークスシネマ)
- IMMACULATE 聖なる胎動(テアトル梅田)
- ファンタスティック4:ファースト・ステップ(TOHOシネマズららぽーと門真/Dolby Cinema)
- ヘッド・オブ・ステイト (配信のみ/Prime Video)
- ハートアイズ(配信のみ/Prime Video)
どれもそれなりに楽しんだのですが、印象に残ったのは『ストレンジ・ダーリン』。仕掛けも楽しみましたが、映画自体の手触りが懐かしく、画作りも魅力的でした。
近年まれに見る本気のバカッぷりが凄まじかった『ヘッド・オブ・ステイト』は、キャストも魅力的でしっかりお金も掛かったポップコーンムービー。もともと配信映画として作られた作品みたいだけど、映画館で観たかったな。
このあとネタバレがあります。気になる方はご注意下さい。
ストレンジ・ダーリン(なんばパークスシネマ)
シリアルキラーによる連続殺人事件が世間を震撼させるなか、モーテルの前に1台の車が停まる。そこには、バーで知り合ったばかりの1組の男女が乗っていた。やがてその女“レディ”は男“デーモン”に命を狙われ、銃を持った彼から必死で逃げ惑うが……。
引用:映画.com
時系列をシャッフルして、ミスリードで展開していくシリアルキラーものです。
時間や空間を自在に切り取り、説明することなくただ提示するだけで観る側に良くも悪くも思い込みを抱かせ、それをひっくり返してあっと言わせるのは映画の十八番。その仕掛けだけでじゅうぶん料金分は楽しめてしまうのですが、全編を彩る70年代サスペンススリラーのディテール(もうもうと煙るタバコや車の煙、臭ってきそうなくらい不潔なモーテル、やけに濃い森の緑など)も大変魅力的。その質感はさすがフィルム撮影にこだわったというだけあって眺めているだけでも飽きません。しかもそんな世界を作り出した撮影監督が俳優のジョバンニ・リビシっていうのも意外だし。クライマックスに登場する終末論者をはじめとして次々出てくる人物もクセ強めで、97分まったく退屈することなく作品世界に引き込まれてしまうのですけれども。
ちょっとびっくりしたのは、話の全貌が見えてくるにつれて、単に古き良き時代の映画を懐かしみつつ、ワンアイデアを展開しているばかりではない視点が浮かび上がってくるところ。ネタバレしたくないので詳細は避けますが、キレのいいラストシーンからエンドロールへの流れや、登場人物に明確な名前がついてなかったりするあたり、いろいろ考えてみるとおもしろそうです。
IMMACULATE 聖なる胎動(テアトル梅田)
イタリアの美しい田園地帯。修道院で暮らしはじめた敬虔な修道女セシリアは、処女であるにも関わらず妊娠していることが判明する。ショックを受けるセシリアだったが、周囲の人々は彼女を次の聖母マリアとして崇め、妊娠を祝福する。やがて、赤いフードをかぶった謎の集団が現れるようになり、セシリアの周囲で修道女の自殺や拷問など奇妙な出来事が続発。身の危険を感じた彼女は、外出を禁じる神父たちの目を盗んで修道院から抜け出そうとするが……。
引用:映画.com
今をときめくシドニー・スウィーニーが主演のナンスプロイテーションであり、『ローズマリーの赤ちゃん』などを想起させる、いわゆるマタニティ・ホラーです。実は観るまでは、シドニー・スウィーニーが修道女ってちょっとピンとこないなあ、なんて思っていましたが、いざ蓋を開けてみればさすが売れっ子。演技がちゃんと上手い、そしてスターだけあって、力強い存在感がありました。
お話のほうはというと、直近では『オーメン ザ・ファースト』みたいな、これまで同ジャンルの面白さの柱とされていたもの(清らかなイメージの女性がひどいめに遭う)を踏襲しつつ逆手に取るスタイル。ランニングタイムが短いこともあって、あらすじそのままのストーリーがとにかくテンポよく進んでいくのですが、けれんたっぷり、ジャンプスケアたっぷりのパワフルでエネルギッシュな展開に、力強さのあるシドニーはなんともぴったりはまります。なかなかショッキングなラストシーンも、彼女の真に迫った演技じゃなかったらちょっと悪趣味になってたかも。
そんなわけで本作、普通に面白いホラーではあるんですが、それ以上にシドニー様の魅力を味わう内容となっています。そして観終わって思うことは、やっぱりスターのオーラすごい。ステレオタイプにはまらないキャスティングもすごいし、マネージメントする側、クリエイター側にも彼女のスター性、演技力、両方への信頼があるんだろうな、なんて思っていたら……。
なんと今回、彼女は製作にも名を連ねているそうで、脚本を読み監督を指名したのもシドニー自身なんだそう。それってつまり、脚本の時点で作品を正しく理解して、あまつさえその中での自分の見せ方もちゃんと分かってるってこと。そしてそれを思った通りにこなす自信もあるってこと。それってすごくない? まだ20代だよ。しかもあのルックスで、何なら下世話に消費されかねない美貌や豊満さに振り回されることなく堅実にスター街道を歩いて行く。すごいね。今の若い人ってみんなしっかりしているイメージだけど……それにしたってさすが。脱帽です。
ファンタスティック4:ファースト・ステップ(TOHOシネマズららぽーと門真/Dolby Cinema)
宇宙ミッションのさなかに起きた事故で特殊能力を得た4人は、その力と正義感で人々を救うヒーローチーム「ファンタスティック4」として活躍している。チームリーダーで天才科学者のリード・リチャーズ/ミスター・ファンタスティックは、ゴムのように自在に伸縮する体を操り、妻スー・ストーム/インビジブル・ウーマンは、透明化や目に見えないエネルギーシールドを使いこなすチームの精神的支柱。スーの弟ジョニー・ストーム/ヒューマン・トーチは、炎を操り高速で空を駆け抜ける陽気なムードメーカーで、リードの親友ベン・グリム/ザ・シングは、岩のように強固な身体と怪力を持つが、内面に葛藤を抱えた心優しい人物だ。世界中で愛され、固い絆で結ばれた彼らは、スーの妊娠という知らせを受けて、喜びに包まれる。しかし、リードのある行動がきっかけで、惑星を食い尽くす規格外の敵、宇宙神ギャラクタスの脅威が地球に迫る。滅亡へのカウントダウンが始まる中、ヒーローである前にひとりの人間として葛藤を抱える4人は、世界を守るために立ち上がる。
引用:映画.com
目下迷走気味のMCU。本作、雑感としては一時期より多少は持ち直してきたのかな、という感じ……って、「ファンタスティック4」歴に関しては、映画3本(『ファンタスティック・フォー 超能力』『ファンタスティック・フォー 銀河の危機』『ファンタスティック・フォー(2015)』)は鑑賞済みではあるものの、コミックス、アニメは全然知らないのに偉そうですみません。だからこの先はざっくり感想のみメモしておきますが。
よかったところはレトロフューチャーな美術とかガジェットとか。特に印象に残ってるのはロボットのハービーとチームが暮らすお家のインテリア。青色が好きなので、どのシーンにも必ず(たぶん)青が入ってるところなんかはすごく上がりました。エキストラのアイシャドウまで青だったりするんですよ。かわいい
キャストの好演も良かったところです。特にジョセフ・クインはヒューマン・トーチがすごくぴったり。彼としっかり絡むシルバーサーファー役のジュリア・ガーナーも。ただペドロ・パスカルに関しては、ファンなんだけどちょっとミスキャストだと感じてしまいました。原作をまったく知らないのでもしかしたら見当違いかもしれませんが、ミスター・ファンタスティックってちょっとサイコパスっぽい天才というイメージがあって、それでいくとペドロ・パスカルは、どう考えてもそういうタイプには見えなくて(ちょっと口下手、コミュ障みたいなシーンはあったけど、ただの不器用なオジサンにしか見えない)2005年の映画のヨアン・グリフィスがそのまんまザ・ウザい理系タイプだったんで、引っ張られているだけかもしれませんが。
いまいちだったところは、やっぱり脚本でしょうか。特に宇宙に行くことになるあたりから、話運びがちょっと無理やり(妊婦なのにサクッと宇宙行っちゃうとか、どうにも言う場面やタイミングが不自然なせりふをきっかけにして話が進んじゃうとか)になってきます。もともと練り込み不足なのか、再撮影や編集でとちらかってぼんやりしてしまったのかくわしくは分かりませんが、このパターン、最近のMCUでよくあります。あとアクションももうちょっとたっぷり、というか、クライマックスでちゃんと4人の個性を生かしたものが観たかった。まあ敵がチートすぎて、なかなか難しかったのかもしれませんが、でもなあ、ちゃんと主役が活躍してほしかったかな。
というわけで、いろいろ言いましたが料金分は楽しみました。なかなか全盛期のクオリティには届かないですが、当時めちゃめちゃ楽しませて貰った恩もありますから、MCUはこれからも追い続けていくつもりです。
ヘッド・オブ・ステイト (配信のみ/Prime Video)
英国首相サム・クラークと米国大統領ウィル・デリンジャーは公然のライバル関係にあり、友好とは程遠く、両国の関係を危うくしていた。しかし、2人がともに強大な外敵の標的となり、それぞれのセキュリティチームもかなわない相手だと分かった時、彼らは互いに力を合わせざるを得なくなる。英国秘密情報部「MI6」のトップエージェント、ノエル・ビセットと手を組んだ彼らは、自由世界全体を脅かす世界的な陰謀を阻止し、互いに生き延びるために協力し合うことになる。
引用:映画.com
『Mr.ノーバディ』イリヤ・ナイシュラー監督作で、主演がイドリス・エルバ、そしてジョン・シナ。このメンツで配信のみって……まあ、アマプラ製作で賞レースにのっかるような作品でもないから分からないでもないのですが、アクションが目玉の内容でもあるだけに、スクリーンで観たいよなあ。でも昼ローっぽさもあるから、手軽さという点ではいっそ配信向きであると言えなくもないのだけれど。
というわけで、内容はあらすじの通り、アメリカ映画の伝統でもある戦う大統領もの。とはいえもちろん、今日びの状況を思えばあまり食指の動かないジャンルを真面目にやっているわけではありません。本作は歴代の戦う大統領もののひな形をなぞりつつ、ジョン・シナが元ハリウッドアクションスター(!)という設定を最大限に生かした、メタネタ満載のコメディ仕立てとなっています。しかもその相方となる英国首相役は、絵に描いたみたいな堅物然とした雰囲気がジョンシナといい感じに対称的なイドリス・エルバ……って、もうこれだけでそれなりにおもしろそうじゃない?
とまあ、バカバカしいこと甚だしくはあります。ただ、キャストもいいしテンポもいい。アクションももちろんハイクオリティで、まさに「こういうのでいいんだよ」という仕上がりです。人によっては命の安さが若干気になるかもしれませんが、基本的に誰が観ても楽しめる作品だと思うので、暇な休日のお供にぜひ。主演のふたり以外に、ジャック・クエイドもいい味出してますよ。
ハートアイズ(配信のみ/Prime Video)
バレンタインデーに残業していた会社の同僚2人は殺人鬼“ハートアイズ”にカップルと間違われて襲われてしまう。一年で最もロマンチックな夜を、彼らは命がけで過ごすことに。
引用:Filmarks
『ハッピー・デス・デイ』など、ポップなホラーの名手、クリストファー・ランドンが製作に名を連ねた、ちょっと変わり種のホラー映画です。というのも本作、コンセプトがロマコメ+スラッシャー映画。思わずなんでやねん、とツッコミたくなる組み合わせなんですが、これがわりと面白かったです。
スラッシャー映画としてもシチュエーションが豊富で、平均以上のおもしろさなんだけど、それ以上に好きになれるかはオリヴィア・ホルト演じる主人公が好きになれるかどうか……という気がします。というかそもそもロマコメというジャンルがキャラクターに感情移入できるかどうかだから当たり前なんだけど、そこがロマコメ苦手な私にめずらしくはまりました。たぶんこれは、脚本にも入っているクリストファー・ランドンの持ち味が私に合うからかなとも思うんですが、ちょっと素っ頓狂な子で、そこがいいんですよ。冒頭、ジュエリー会社に勤める彼女がプレゼンするCMからして「いやいや……それ?」みたいな。
つくりは王道だし、ドタバタする展開は好き嫌いもあるかもしれませんが、ライトに楽しめる内容なんでハードルそこそこで観るのがいいと思います。そもそもホラーコメディってそういうものだし。目がハートに光る殺人鬼もかわいいです。