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画像:映画.com
あらすじと作品情報
元特殊部隊員のレヴォン・ケイドは、危険な世界から退き、現在は建築現場の監督として穏やかな生活を送っていた。そんなある日、恩人でもある上司の娘ジェニーが姿を消してしまう。ジェニーを捜索する中で、レヴォンは人身売買を生業とする世界的な犯罪組織の存在を突き止める。自分を支えてくれる大事な「家族」を取り戻すため、レヴォンは封印していた特殊部隊時代のスキルを解き放ち、建設現場で使い慣れた工事用具や特殊部隊時代の銃火器を手に、犯罪組織を相手にひとり戦いに身を投じていく。
引用:映画.com
感想(ネタバレを含む場合があります)
もはや日本の正月には欠かせない縁起物となったステイサム映画の最新作。撮影は前作『ビーキーパー』からほとんど間を置かずに進められ、監督を務めるデヴィッド・エアーを筆頭にスタッフも何人かはそのままスライドする形だったらしい。となると評判の良かった前作と大きく異なるのは脚本を手掛けた御大の存在のみということか。いやいや撮影も編集も変わってるから。そもそも作風からして『ビーキーパー』とは全く違ってるわけだから、まあ……。
と、この歯切れの悪さから、映画としての若干の煮え切らなさはもう伝わってしまったかもしれない。でも古式ゆかしいアクション映画の系譜を汲むタイトルとしてはギリ教養範囲。そもそもこういう映画は、並んだキーワードが元海兵隊、人身売買、娘の誘拐と新鮮味の欠片もないものであっても、プロットが無駄に入り組み一部整合性に欠けていても、主人公(ステイサム)が銃火器を持って派手に暴れてくれれば大抵はチャラになってしまうものなのだ。
しかも今回予想外に出色だったのが、誘拐される建設会社社長の娘ジョニーを演じたアリアナ・リバス。彼女は『ブラックフォン 2』でも存在感が光っていたが、今作ではがっつりアクションをこなしている。なかなか堂に入っていたのでもともと何らかの素地があったのかと思いきや、そんなものはまったくない上に、アクションをやるのも初とのこと。インタビューによると、ある日突然御大から電話が掛かってきて(直々ということだが凄い!)不安半分で受けた仕事だったものの、最終的にはトレーニングも撮影もかなり楽しかったらしい。となると彼女は、もしかしたら今後のアクション映画を担う一翼となるかもしれず……今後追いかけたいスターが見つかる。それだけでひとまず料金分はペイできたような気がしている。
ただ気になる部分は多かった。たとえば『ワーキングマン』というタイトルで主人公が現場監督なら、工具や工事現場の専門知識を生かして無双するシーンや、いわゆる「はたらくくるま」の活躍がもっと観たかったとか、あれだけ期待を持たせる設定を付けたデヴィッド・ハーバーを出すなら、数秒でもいいからアクションが観たかったとか。あと、あの流れならバイカー集団は最後は味方だろ、とか、社長の娘のピアノ弾ける設定必要? とか、果てはステイサムのトラウマやそこから派生する実の娘や義父との問題に至っては、無駄に複雑で全体のバランスを崩しているだけならともかく、ちょっと扱いが雑過ぎてノイズになっているまである。
でもこのへんの投げっぱなし設定は、もしかしたら本作が当初、テレビシリーズとして企画されていた名残かもしれない。だからといってガバガバでも許されるというわけではないのだが、大勢の人間が関わる過程で細かな綻びが出てくるのは映画製作あるあるだ。私自身はこの手の映画はそういう部分を突っ込んで楽しむところまでがセットだと思っていることもあり、もはや決定的なマイナスポイントにはならなかったりする。
しかも本作、興行成績はまずまずだったらしい。チャック・ディクソンが手掛ける原作小説「Levon Cade」シリーズもストックがあるとのことなので、ワンチャン続編もありそうだ(映画ももちろんそこを想定したつくりとなっていた)。もしそれが実現したら、今回の投げっぱなし設定がどこかで生かされる可能性もなきにしもあらず。その際はもう少しリアル寄りの、泥臭さが感じられる雰囲気になればなお嬉しい。というのも今作の冒頭、かっこいいクレジットからチンピラを追い払うあたりまでの、比較的地に足の付いた渋めながらも温かみのある味わいがかなり好みだったから。ステイサムといえば一匹狼のイメージが強い。とはいえぼちぼち還暦の足音も近づいてきていることだし、このあたりで肉体労働者たちの頼れる気のいいアニキ感溢れるステイサムとか、すでにシリーズ化されることが決まっている『ビーキーパー』と差別化する意味でもどうだろう。私はとても見てみたいのだが。
