2025年6月に劇場で観た新作映画の感想を書いています。
- MaXXXine マキシーン(TOHOシネマズ梅田)
- ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング(TOHOシネマズららぽーと門真/Dolby Cinema)
- メガロポリス(大阪ステーションシティシネマ)
- 罪人たち(T・ジョイ梅田/Dolby Cinema)
今月のお気に入りはもちろん『MaXXXine マキシーン』!!
公開がだいぶ遅れていて、ちゃんと公開されるのかと不安になったりもしましたが、いやいや待ってよかった。めちゃめちゃよかった……。
MaXXXine マキシーン(TOHOシネマズ梅田)
テキサスで起きた凄惨な殺人事件の現場から、マキシーンがただひとり生き残ってから6年が過ぎた。ポルノ女優として人気を獲得した彼女は、新作ホラー映画の主演の座をつかみハリウッドスターへの夢を実現させようとしていた。その頃ハリウッドでは連続殺人鬼ナイト・ストーカーの凶行が連日ニュースで報道されており、マキシーンの周囲でも次々と女優仲間が殺されていく。やがてマキシーンの前に、6年前の事件を知る何者かが近づき……。
引用:映画.com
監督:タイ・ウェスト/製作:ジェイコブ・ジャフク タイ・ウェスト ケビン・チューレン ハリソン・クライス ミア・ゴス/製作総指揮:レン・ブラバトニック ダニー・コーエン ジェレミー・ライツ ピーター・ポーク サム・レビンソン アシュリー・レビンソン/脚本:タイ・ウェスト/撮影:エリオット・ロケット/美術:ジェイソン・キスバーデイ/衣装:マリ=アン・セオ/編集:タイ・ウェスト/音楽:タイラー・ベイツ/キャスティング:ジェシカ・ケリー
出演:ミア・ゴス/エリザベス・デビッキ/モーゼス・サムニー/ミシェル・モナハン/ボビー・カナベイル/ホールジー/リリー・コリンズ/ジャンカルロ・エスポジート/ケビン・ベーコン
『X エックス』『Pearl パール』に続くミア・ゴス×タイ・ウェストコンビのホラーシリーズです……と思いきや、今回はスリラー、ミステリー要素が強め。ホラーっぽいところもあるんだけど、ミア・ゴス演じるマキシーンが強すぎて、彼女がどうなるのか、という危なっかしさは微塵もありません。もしかしたらそこで「思ってたのと違う!」と考える向きもあるかもしれませんが、ミア・ゴスだよ!? 彼女がシリーズの締めとなる本作で、凡百のホラー映画の女性キャラクターみたいにキャーキャー怯えて防戦一方で終わるわけないじゃないですか。
過去のしがらみやトラウマに呑み込まれそうになりながらも進みたい道を切り開いていく、マキシーンに限らず本作に登場する女性たちはもれなくみんなそんな感じ。とりわけ80年代の夢と希望が詰まった肩パッドをガツンと装着したエリザベス・デビッキは最高なのでファンは刮目すべきだし、リリー・コリンズ、ソフィー・サッチャーもしっかり存在感があってよかったです。さらにこれまで同様、家父長制を含めたキリスト教原理主義への批判はもちろん、作品の舞台となった時代(今回は80’s)の映画への愛あふれるオマージュ、ジャンル映画へのリスペクトなどアイキャンディ的要素もふんだん散りばめつつ、上映時間はなんと103分。あっという間に終わってしまって、久々に映画観てて「ええええもっと観てたいんですけど!!」って叫びそうになっちゃいました。
というわけで、前作『Pearl パール』のほうが1本の映画としてはキレイにまとまっていた気もしますが、マキシーンとパールが合わせ鏡のごとく対比されていると思うと、今作も見ごたえはじゅうぶんです。シリーズを通して観てきたからこそ、今回の、もうのびしろが必要ないくらい強いマキシーンもしっくりくるし、そんな彼女を通すことで、あまりにやるせなかったパールの人生に思いを馳せることも可能。つまり本作はシリーズを追うことで、より感慨深く楽しめるタイプの作品で。なのでこれから観る人は、ぜひシリーズでの鑑賞がおすすめです。観る順番は基本公開順でいいと思うのですが、私としては『X エックス』が5倍くらい面白くなる傑作、『Pearl パール』を先に観るというのもアリなんじゃないかと思います。
ミッション:インポッシブル ファイナル・レコニング(TOHOシネマズららぽーと門真/Dolby Cinema)
前作「ミッション:インポッシブル デッドレコニング」とあわせて2部作として製作され、「デッドレコニング」から続く物語が展開。前作のラストで世界の命運を握る鍵を手にしたイーサン・ハントと、その鍵によって導かれていくイーサンの運命が描かれる。また、これまでほとんど語られてこなかったイーサンの過去などが明かされる。シリーズおなじみとなったトム・クルーズ本人によるスタントシーンも健在で、今作では飛び回る小型プロペラ機にしがみつく空中スタントなどが見どころとなる。
引用:映画.com
監督:クリストファー・マッカリー/製作:トム・クルーズ クリストファー・マッカリー/製作総指揮:デビッド・エリソン ダナ・ゴールドバーグ ドン・グレンジャー クリス・ブロック/原作:ブルース・ゲラー/脚本:クリストファー・マッカリー エリック・ジェンドレセン/撮影:フレイザー・タガート/美術:ゲイリー・フリーマン/衣装:ジル・テイラー/編集:エディ・ハミルトン/音楽:マックス・アルジ アルフィ・ゴッドフリー/キャスティング:ミンディ・マリン
出演:トム・クルーズ/ヘイリー・アトウェル/ビング・レイムス/サイモン・ペッグ/イーサイ・モラレス/ポム・クレメンティエフ/ヘンリー・ツェーニー/ホルト・マッキャラニー/ジャネット・マクティア/ニック・オファーマン/ハンナ・ワディンガム/トラメル・ティルマン/シェー・ウィガム/グレッグ・ターザン・デイビス/チャールズ・パーネル/マーク・ゲイティス/ロルフ・サクソン/ルーシー・トゥルガグユク/アンジェラ・バセット/ケイティ・オブライアン
メガロポリス(大阪ステーションシティシネマ)
21世紀、アメリカの大都市ニューローマでは、富裕層と貧困層の格差が社会問題化していた。新都市メガロポリスの開発を進めようとする天才建築家カエサル・カティリナは、財政難のなかで利権に固執する新市長フランクリン・キケロと対立する。さらに一族の後継を狙うクローディオ・プルケルの策謀にも巻き込まれ、カエサルは絶体絶命の危機に陥る。
引用:映画.com
監督:フランシス・フォード・コッポラ/製作:フランシス・フォード・コッポラ バリー・ハーシュ フレッド・ルース マイケル・ベダーマン/製作総指揮:アナヒド・ナザリアン バリー・M・オズボーン ダーレン・M・デメトレ/脚本:フランシス・フォード・コッポラ/撮影:ミハイ・マライメア・Jr./特殊撮影:ロン・フリック/美術:ブラッドリー・ルービン ベス・ミックル/衣装:ミレーナ・カノネロ/編集:キャム・マクラクリン グレン・スキャントルベリー/音楽:オスバルト・ゴリジョフ/視覚効果監修:ジェシー・ジェームズ・チザム/セカンドユニット監督:ロマン・コッポラ/キャスティング:コートニー・ブライト ニコール・ダニエルズ
出演:アダム・ドライバー/ジャンカルロ・エスポジート/ナタリー・エマニュエル/オーブリー・プラザ/シャイア・ラブーフ/ジョン・ボイト/ローレンス・フィッシュバーン/タリア・シャイア/ジェイソン・シュワルツマン/キャサリン・ハンター/グレース・バンダーウォール/クロエ・ファインマン/ジェームズ・レマー/D・B・スウィーニー/イザベル・クスマン/ベイリー・アイブス/マデリーヌ・ガルデラ/バルサザール・ゲティ/ロミー・マース/ヘイリー・シムズ/ダスティン・ホフマン
近未来のアメリカをローマ帝国になぞらえたパラレルっぽい世界を舞台に、時間を止めたりメガロンという謎物質を作れたりする建築家、アダム・ドライバーが世界を救うみたいな話? なんかすべてが大仰で壮大っぽかったけど、近未来の都市に動く床以外の何かはなかったし、謎物質や時間を止める能力がお話の中でどう役に立ったかもよくわからなくて……ごめんなさいよー、私にはよくわかりませんでしたよー……。
ただ建築家(=アート?)と女性(=家族?)が行き詰まった現状を打破するみたいなメッセージはなんとなく伝わったし、コッポラって過去作でもそういうテーマを扱っていた気がするし。まあそういうことがやりたかったんだろうなと分かると同時に、だったらもう少し具体的な説明や軸となるストーリーがあって欲しかったなと思ったりもしたのですが……いや、もしかしたらあったのかも。私が汲み取れなかっただけなのかも。
というわけで、ストーリー、ビジュアル、ぶっちゃけどちらもいろいろな点でうまくいってはいないと思います。でもこれ、コッポラの自主製作ですからね。別に好きなことをやればいいと思うのです。イメージの断片をつないでいくような、夢のごとく辻褄の合わないシーンの羅列でも、それがコッポラの頭の中だと思うと俄然興味が湧いてくるし、それについてあれこれ思案するのも映画好きにとっては至福の極み。次回作があったらまた私はいそいそと劇場へ足を運ぶと思うのですが、コッポラに関してひとつだけ気に掛かるのは、ちょいちょい伝え聞こえてくる撮影中のセクハラ、パワハラについて。こと女性観の古さは作品を観れば容易に伝わってくるので、なんかナチュラルにやっちゃいけないことやってそうなんだよな……。
アモーレの国の86歳のおじいちゃんに今のルールを言って聞かせたって理解不能なのかもしれませんが、これだけは相手があることだから知らぬ存ぜぬでは通りません。コッポラ家は映画に携わる身内が大勢いるのだから、次回はそこで結託して、なんとかおじいちゃんの暴走を阻止してほしいものです。
罪人たち(T・ジョイ梅田/Dolby Cinema)
1930年代、信仰深い人々が暮らすアメリカ南部の田舎町。双子の兄弟スモークとスタックは、かつての故郷であるこの地で一獲千金を狙い、当時禁止されていた酒や音楽を振る舞うダンスホールを開店する。オープン初日の夜、欲望が渦巻く宴に多くの客が熱狂するが、招かれざる者たちの出現により事態は一変。ダンスホールは理不尽な絶望に飲み込まれ、人知を超えた者たちの狂乱の夜が幕を開ける。
引用:映画.com
監督:ライアン・クーグラー/製作:ジンジ・クーグラー セブ・オハニアン ライアン・クーグラー/製作総指揮:ルドウィグ・ゴランソン ウィル・グリーンフィールド レベッカ・チョー/脚本:ライアン・クーグラー/撮影:オータム・デュラルド・アーカポー/美術:ハンナ・ビークラー/衣装:ルース・E・カーター/編集:マイケル・P・ショーバー/音楽:ルドウィグ・ゴランソン
出演:マイケル・B・ジョーダン/ヘイリー・スタインフェルド/マイルズ・ケイトン/ジャック・オコンネル/ウンミ・モサク/ジェイミー・ローソン/オマー・ミラー/デルロイ・リンドー
本国での公開時から話題となっていた、大変評判のよい(たぶん来年の賞レースにも絡んでくるはずの)ライアン・クーグラー監督作品です。ネタバレしちゃうと楽しさが半減するタイプの作品なので、これから観ようと思ってる人は今すぐこのページは閉じてください。警告したよー。
というわけで、都会でそこそこの成功をおさめたマイケル・B・ジョーダン演じる双子が、小金を持って地元にUターン。たくさんの人が集まれるダンスホールを作るために資材を集め、従業員も集めていよいよオープン……というお話なんですが。中盤に披露される、狂乱の宴席あたりまではめちゃめちゃおもしろかったです。音楽に疎く、ミュージカル映画やダンスにまったく興味のない私でもちょっとザワッとしたから、好き人なにとっては圧倒されるくらいの迫力を感じられるのではないかと。ただその後、ちょっと意外な展開になっていくあたりから、なんていうか……話はおもしろいんだけど急にテンポが悪くなるんですよね。
招かれざる客が来て、本来の客や従業員がどんどん減っていくあたりはオフビートなコメディみたいで笑えるシーンもあるものの、ライアン・クーグラー監督、なにせアクションが上手くない。しかも嫌でもバイオレントなアクションが楽しかった『フロム・ダスク・ティル・ドーン』を想起させる話運びで、私自身もドンパチ好きだからどうしても比べてしまう。さらに終盤向けてアクションの密度がどんどん強くなっていき……つまりだるいシーンの割合がどんどん多くなってしまうので、どうしても尻すぼみ感が拭えない。
退屈な映画では全然ないの。でもライアン・クーグラーの資質を考えると、ジャンル映画よりももっと直球の人間ドラマに音楽やダンスの要素を取り入れていった方がいいんじゃないのかなという気がしなくもなく……とはいえ本作は本国では大絶賛、日本では公開規模こそ小さかったけど、映画好きのあいだではそれなりに高評価。だからたぶん私にセンスがないだけなんだろうな。