映画『サマリタン』感想 ひたすらスタローンを愛でるべし 異色のヒーロー映画(ネタバレあり)

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あらすじと作品情報など

母と2人で貧しい生活を送る13歳の少年サムは、かつて多くの人々を救いながらも宿敵ネメシスとの戦いの末に命を落としたヒーロー、サマリタンの大ファンだ。ある日、ギャングに襲われていたところを近所で暮らす老人ジョーに助けられたサムは、ジョーの驚異的な力を目の当たりにし、彼の正体がサマリタンではないかと考えるように。そんな中、ネメシスを名乗る男が現れ、街を大混乱に陥れる。

原題: Samaritan/2022年/アメリカ/102分
監督:ジュリアス・エイバリー
出演:シルベスター・スタローン/ジャボン・“ワナ”・ウォルトン/ピルウ・アスベック/ダーシャ・ポランコ/モイセス・アリアス/マーティン・スター/ソフィア・テイタム/ジャレッド・オドリック/ヘンリー・G・サンダース/シャメイク・ムーア
配信/Amazon Prime Video
引用:映画.com

予告とざっくり概要(ネタバレなし)

プロフィールにもある通り、わたしの映画人生はスタローンからはじまりました。それからざっくり40年近い年月が経つのですが、いまだに彼の主演作品が観られるとは何たる至福。ありがたい限りです。

グラフィックノベル原作のスーパーヒーローを演じるということについては、さほど驚きはなし。だって過去には『ジャッジ・ドレッドもあったし、最近ではMCUDCの作品にも参加しているわけで。もともと彼は流行りもの好き、逆食わず嫌いなところもあるので「やっとか」という感じすらあります。

ただ監督を務めたのが『オーヴァーロードジュリアス・エイバリーというのには驚きました。だって『オーヴァーロード』、最高だったんですもの。新作を待っている監督のひとりだったのですが、まさかこんな形で出会えるとは。おそらく持ち味からしても、ダークめなヒーローものならぴったりだし、アクションやディテールも丁寧な印象があるので期待できそうです。

公開については、MGMがアマゾンに買収された経緯もあって、配信という形になってしまったけどまあ仕方なし。この手のゴタゴタでお蔵入りになってしまう作品なんかもあったので、それに比べたら全然ラッキーです。とにかく些末なことは超前向きに捉えて、さっそく観賞してみました。

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感想(ネタバレ注意)

※以下ネタバレあります。



スタローン、アイドル映画としては最高だった!

近年、その佇まいにぐっと深みが増してきているスタローン。『クリード』でもそのくたびれ感になんとも言えないキュートさがあったのですが、『ロッキー』というただ愛でるにはあまりに知りすぎている男の仮面を脱いだ本作では、それをさらにインスタントに楽しめる気楽さがありました。

スラム街でゴミ収集を生業としている(ニット帽がなんとも似合う)、ジャンク品を拾ってきては修理(大きい身体を丸めてちまちまやっているのがいい)、パワーを使いすぎて身体が熱くなったらアイスクリームを食べて冷却(よく分からないうんちくを並べながらというのがツボ)等々、本作における彼のときめきポイントを挙げていくとキリがないわけですが、トム・クルーズ然り、イーストウッド然り、スターと呼ばれるタイプの俳優さんというのは、案外客観的な目線で自分の見せ方を心得ていたりするものです。昨今のスタローンも例に漏れずそんなセンスを発揮。もともと映画人として制作側にも回りつつここまでやってきた人なので、頭の悪い人ではないのは明白なのですが、これでもかとイキッては失笑されていた時代もあったので、ファンとしてはうれしい限りです。

で、本題。本作で特筆すべき点となると、やはり子供との交流でしょう。ある程度の年齢になってからの作品で、彼が子供と関わる映画はなかったはず。『グラン・トリノ』『LOGAN/ローガン』『ヴィンセントが教えてくれたこと』など、社交性に欠けるおじいちゃんと居場所のない子供映画というのはひとつのジャンルなので、満を持してそこにチャレンジしてくれたのもうれしいし、またこの子(ジャボン・“ワナ”・ウォルトン君)が役にぴったりなんですよね。向こうっ気の強さと根のまっすぐさ、子供らしいずるさ、浅はかさも自然に出てる。

 

(C)2022 Metro-Goldwyn-Mayer Pictures Inc. All Rights Reserved.

そんな子が情感たっぷりのくすんだ街並みを背景にスタローンになついたり反発したり、スタローンはスタローンで心を開いてみたりつれなくしたり、ちょっといいことを言ったり喧嘩の仕方を教えてみたり。寂しくひねくれた大人にとって、これはもう癒やし以外のなにものでもないんじゃないでしょうか。

アクション映画としても良き

派手さ、スタイリッシュさはありません。でもそこがいい。

見せるべきはスタローンなのですから、カットをめまぐるしく割ったり、うるさく劇伴を入れるみたいなよけいな装飾はいらんのですよ。そしてスタローンも御年76歳とは思えない肉弾戦(マジでよく動く、そして走る)をしっかり見せてくれるところが素晴らしく(スタントの使いどころも上手い!)、加えてゴミ収集車でのぶっ込み、無駄に派手な爆発、しっかり捨て台詞、ハンマーで大暴れ、観たいものがすべてありました。チンピラの車に轢かれるスタローンのくだりなんかもタイミングが最高。分かってる、アクションに関してはもうそれしか言うことがないくらい、分かってる。泥臭い90年代のそれを踏襲しているという点で、完璧以外の何ものでもない仕上がりでした。

ちなみに悪役は、ラスボス的立ち位置にピルウ・アスベック、その舎弟にモイセス・アリアスさらに(悪役じゃないけど)マーティン・スターとわりと渋い面々が出演しています。それぞれ雰囲気もぴったりな上に実力もあるので、こじんまりした作品に湯加減のいいチンピラぶり、小市民ぶりを漂わせていました。もう少し脚本がしっかりしているとかなり魅力的になったんじゃないかと思います。あと全然知らない人なのですが、Netflixのドラマ『ノット・オーケー』や『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』に出ているらしいソフィア・テイタムという女優さんも魅力的でよかった!

とまあ、いろいろすごく好みなのですが、スタローンはどのあたりまで関わっているのでしょうか。昔はともかく、今は彼もそんなにアグレッシブではないはずなので、本作にはジュリアス・エイバリーのセンスもちゃんと発揮されていると思うのですが。なんにせよわたしは今後も強く推したいので、ぜひともスタローンが引っ張ってきた若手監督として、パトリック・ヒューズ、ライアン・クーグラーに続き、個性に合ったジャンルで大いに活躍してほしいものです。

満点というわけではないけれど

とはいえ、気になる点はけっこうあります。特にサマリタンとネメシスという、ストーリーのベースとなる伝説の双子ヒーローの過去はかなりざっくり。現役時代、ヒーローとしてもてはやされていたサマリタンは実は金持ちに媚びていて、ヴィランとされていたネメシスは貧乏人には人気者だったという噂もあったと語られる場面がありますが、真偽はまったく説明されないまま。敵となるネメシス崇拝チンピラ集団にしても、何らかの思想を持ってる雰囲気がありましたが、そのへんも謎のまま潰されちゃいました。主人公を含めて行動やせりふが前後するというか、つじつまの合わない(もしくはストーリーを進めるために無理矢理つじつまを合わせている)部分も散見され、不自然なところが多いです。

こういう脚本の穴っぽい部分は、気になる人はなると思います。オチも想像出来る範疇ですしね。でもわたし的にこの映画の見どころはそこじゃないので問題なし。むしろこれくらい雑なほうが、アメコミ原作の微妙な映画が大量生産されていた頃の味わいがあっていいんじゃないかという気もしなくもない。

なんにせよ観たいものを観ることができたということで大満足だし、スタローンが永遠にわたしのヒーローであることはもちろん、ジュリアス・エイバリーも出来る子だとあらためて確信。よって今後とも、お2人の活躍は全力で追いかける所存なのであります。

配信はないようですが、とても楽しい映画なのでぜひ円盤で!
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