当ページのリンクには広告が含まれています。

今年は自宅のリフォームという大仕事があって、後半はほとんど(というかまったく)映画の感想を書けませんでした。
見逃しも多かったような気がしていたのですが、蓋を開けてみれば新作の鑑賞本数は106本。本数的には案外例年通りでした。
でも劇場で観る本数はだんだん減っているはずで、最近の劇場通いの何がキツいって……洋画はそこそこの話題作でさえ一週目に足を運ばなければ上映回数激減、早朝やレイトという選ぶ時間帯に飛ばされてしまうこと。ハシゴしようと思っても、スケジュールが組みづらいから困ったものです。
映画館も商売なので仕方ない部分もあるのだろうとは思いますが……でもコナンとか回数やりすぎじゃない? そもそもコナンとか鬼滅ってIMAXでやる必要ある? いや、まあIMAXで上下左右に黒入れて上映しても人が入るからやるんだろうけどね。まあいいけどね。
というわけで、ベスト10本は今年観た新作映画(リバイバル含む)から、特にランキングは気にせず印象に残った10本+選外を選出しています。
もともと気になった映画しか観に行かないし、さらにその中から好みに合った作品を選んでいるということで、大いに偏ったランキングとなっていますがご了承下さい。
2025年私的映画ベスト10本、発表の前に
感想を書いていない、2025年8月以降に観た映画のタイトルを書き出しておきます(ほぼ自分用)。
【8月】キムズビデオ/アイム・スティル・ヒア /サタンがおまえを待っている /KNEECAP ニーキャップ/蟲/アンデッド 愛しき者の不在 /聖なるイチジクの種/マウンテンヘッド /パディントン 消えた黄金郷の秘密【9月】子鹿のゾンビ/愛はステロイド/Mr.ノボカイン /バレリーナ The World of John Wick/ブラックドッグ/THE MONKEY ザ・モンキー【10月】ラスト・ブレス/KIDDO キドー/ワン・バトル・アフター・アナザー/天国と地獄 Highest 2 Lowest/死霊館 最後の儀式/ファイナルデッドブラッド /ハウス・オブ・ダイナマイト【11月】Mr.ノーバディ2 /フランケンシュタイン /プレデター バッドランド /M3GAN ミーガン 2.0 /ブラックフォン 2/裸の銃を持つ男【12月】WEAPONS ウェポンズ /マインクラフト ザ・ムービー/ジェリーの災難/カーテンコールの灯/端くれ賭博人のバラード/アフター・ザ・ハント/フォーチュンクッキー/血戦 ブラッドライン/ジャグラー ニューヨーク25時 4K修復版/トレイン・ドリームズ/エディントンへようこそ/ジェイ・ケリー/シンシン SING SING/アバター ファイヤー・アンド・アッシュ/ボディビルダー
※当ブログの新作映画は、その年に日本で公開(リバイバル含む)、配信された作品、ドラマの場合はシーズン単位で配信がスタートした作品としています。
全部で106本。なんと邦画ゼロ。『敵』とか『「桐島です」』とか気になるタイトルがなかったわけではないのですがタイミングが合わなかったのでしょう。
年末公開作で気になっていた『シャドウズ・エッジ』と『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』は配信持ちになりそうです。
2025年 私的映画ベスト10
過去に感想を書いている作品については記事へのリンクをつけています。
配信サイトへのリンクは、アマプラ会員なら見放題で楽しめるものもわりとあったので、ぜひご活用下さい。
ワン・バトル・アフター・アナザー
ポール・トーマス・アンダーソンの作る映画は常に新鮮な驚きに満ちていて、新作が出るたびベスト10に入れてきた……というか、入れざるを得ないみたいな感じだったんですが、今回はなんと、かつてない大予算を獲得してのアクションもの。ストーリーもわかりやすく、キャストもプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ……って、好みすぎるではありませんか。
俄然期待に胸を膨らませて劇場へと足を運んだわけですが、高くなりすぎたハードルもなんのその、しっかり見ごたえのあるおもしろさなのに重くなりすぎず、笑える小ネタ(オマージュ含)も絶妙のバランスで加味。キャストはみんな生き生きしているし、アクションに至っては間違いなく伝説になるだろう斬新さまである。
おもしろい。めちゃくちゃおもしろい。おもしろい映画はたくさんあるけど、おもしろいがずっと続くのがすごい。さらに社会派な要素の扱い方や、最終的に主人公となる娘ちゃんの選ぶ道も塩梅が超ほどよくて……鑑賞後まですがすがしいとか、もう非の打ちどころがないじゃない。今年のBEST10、当然のように最初に出てきたタイトルでした。
シンシン SING SING
公開時から気になっていたのですが見逃してしまい、同じ監督のNetflix映画『トレイン・ドリームズ』を先に鑑賞。なかなか良かったので、すでに配信の始まっていたこちらもすぐに観たのですけれども。
刑務所内の更生プログラムとして演劇に携わる囚人たちの実話と聞くと、重そう、泣かせに来そうと構えてしまいます。でも本作で描かれるのは囚人たちの更生や境遇ではなく、それぞれに事情を抱えた彼らが演劇という芸術に触れることでどう変わっていくか、というところ。ハードモードな人生や刑務所暮らしで感情を殺すことがデフォルトになってしまった彼らが、演じることで人間らしい喜怒哀楽を思い出していき、大勢でひとつのものを作り上げる過程で互いに抱いていた偏見や思い込みが取り払われていくようすはビジュアルの静けさに比して圧巻です。
しかも本作の役者は(一部を除いて)実際にこのプログラムに参加していた囚人たちを起用しているということで、みんなナチュラルに個性が強い。多分これ、ネームバリューがあるようなスターが演じていたら絶対ここまで引き込まれてはいなかったと思う。人間の顔っておもしろい。そもそも造作が個性的である上に、さらにその人だけの歴史と時間が積み重なっていくものなんだよな……みたいなことも感じさせられた作品でした。
MaXXXine マキシーン
傑作『Pearl パール』を挟んでどう見せるのだろう、と不安半分だったX三部作。決して華やかではない80年代ハリウッドの場末を舞台に、ミア・ゴスはもちろんソフィー・サッチャー、リリー・コリンズ、さらには彼女たちを見守るかのごとく毅然とした存在感が際立つエリザベス・デビッキ……力強く生きようとする女性たちがとにかく魅力的で最高でした。
またそんな彼女たちの敵となるのが大雑把な括りでの「男性」ではなくて。普通のジャンル映画なら彼女たちの脅威になりそうな男たちが案外いい人として描かれていたりして、そのへんのさじ加減もさすがタイ・ウエスト、信頼出来る男です。
書くまでもありませんが70年代、80年代感溢れるルックや当時のホラーやサスペンス映画を連想させるオマージュも大いに見どころとなっており、そんな空気を体現するかのような役どころを楽しそうに演じてるケビン・ベーコンにはなんともほっこりさせられるというか……ホントこの人、いい人なんだろうな。

サブスタンス
往年の名作、名監督のオマージュを存分に散りばめつつ、キレキレでポップなビジュアルセンスと新鮮なアイデア、現代的な主題が見事に融合した、むちゃくちゃ楽しいボディホラーです。
笑えるところもいっぱいあるので、まだ観ていない人はあまり構えずに観てほしい。とはいえホラーはホラーなんで、グロテクスかつバイオレントではあります。

聖なるイチジクの種
上映時間も長いし、お話もなかなか重いのですが、それを凌駕する勢いでエンターテイメントとして面白い。ミステリ要素のあるサスペンスとして引き込まれるし、ラストにはちょっと驚く派手さのアクションシークエンスがあったりもします。
一朝一夕ではどうにもならないとても根深い問題を、命がけ(イランでは政府を批判すると罪に問われます)で告発した映画がこんなオモシロ風味だなんて。監督の胆力に脱帽です。
トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦
とにかく楽しかった枠はもうこれしかないでしょう。
大予算で再現された九龍城砦で、アクション、人情、友情、確執……これぞ香港映画と言わんばかりの情報てんこ盛り。なのに散漫じゃない、派手なだけじゃなく深みもあって。
いちど観はじめると一生観ていたくなってしまう、麻薬みたいな作品です。

デビルズ・バス
自分のしんどかった時期と被って大いに食らってしまった作品です。がまん。ダメ。ゼッタイ!!

スーパーマン
ハリウッドでもかなりの大ネタを、今後のDCユニバースに繋げなくてはならないという縛りアリでこれ以上なくうまくアレンジ。とりわけ主演に関しては、クリストファー・リーヴ&マーゴット・キダーコンビのイメージを払拭できるスターがいるのだろうかと不安でしたが、デビッド・コレンスウェットは端正ながら今っぽい柔らかさがあっていいし、レイチェル・ブロズナハンも気の強さとキュートさのバランスが絶妙。そしてなによりクリプトがかわいい。ていうかもうクリプトだけでごはん一生おかわりできそうなんですが……。
久しぶりにアメコミ映画でテンションが上がりました。最近のジェームズ・ガンは手癖が鼻につくところもあったのですが、今回はいい意味で「らしさ」控えめ。「スーパーマン」の本質をくみ取ったまっすぐな物語と、今後が楽しみなヒーローたちの競演、楽しかったです。

キムズビデオ
まるで伝説のごとく、名前だけはずいぶん昔から知っていたキムズビデオの正体をようやく知ることができました。それだけでもじゅうぶん満足なはずだったのですが、映画後半の、まるで映画オタクの見ている夢の中みたいな、虚実ないまぜかつ古今東西の映画の切り抜きが入り乱れるビデオテープ奪回パートがもう楽しくて楽しくて……マジで!?の連続なんですよ。ほんと誇張なしで。
あと80年代後半のニューヨークで海賊版を取り扱うレンタルビデオショップというと、勝手にほとんど裏社会寄りのデンジャラスな人が、お金になるからやっていたんだろうなと思い込んでいましたが、写真を切り抜いたお面を被った主人公たちの無謀な話に「映画の神様が言ってるから仕方ない」と穏やかに応じてくれるキムさんもよかった。なんとも謎な人だけど、自分でも映画を作っていたりして、映画への愛は本物なんですよね。
ハウス・オブ・ダイナマイト
昨今の世界情勢は複雑かつ多岐に渡っていて、ともすれば最近忘れがちだった、どう考えてもヒトの手に余るものに囲まれて暮しているという事実を久々に突きつけられた気がします。いや核って恐ろしいものよということは、常に心に留めているつもり。でもそれがどういうことなのかということを具体的に、つまり「なす術なしの絶望感」をしっかり味わわせてくれる体験というのはなんだか久しぶりだなと感じました。
とはいえ本作中の出来事が現実になる可能性みたいなことに関しては、監督的にはどうでもよさそうで。それより際立って伝わるのは、核を人間がコントロールすることの無理ゲーさ。どんなに聡明で善良な人間でも、さすがのイドリス・エルバだって18分で狂えちゃうんだよと。
18分間を3つの状況で描いたり、ラストをああいう形にしたり、最近はとりわけ嫌がられるモヤモヤした作りにしているところも私としては好印象。正直ベスト10本の10本目はなかなか決めることができなかったのですが、やっぱりこういう題材が定期的に扱われることは大切なんじゃないかと思うので選びました。似たような状況を描く名作もたくさんあるけど、テクノロジーと切り離せないものだから新作でないと意味がないとも思うんですよね。
選外
最終審査に残ったタイトルたちです。
10本で選んだ作品とジャンルが被るので外したパターンが多くて、おもしろさについては10本と遜色ありません。
愛はステロイド
匂い立つような80年代感を漂わせるルックや、クセの強すぎる登場人物たちが魅力的なクライムもの。ときどき「はい??」と思考が停止しそうになるくらい変なシーンがあったりして、独特の個性を放ってます。
映画としてのクオリティはとても高いと思いつつベスト10からこぼれてしまったのは、終盤のメタなくだりは『サブスタンス』のほうが好みだったり、自由に生きようとする女性主人公なら『MaXXXine マキシーン』が捨てがたいなと思ったり。
好きなんですけどね。
顔を捨てた男
そもそも主人公がないものねだりばかりをしている超ダメ男なんですが、彼が好意を抱くイングリッドにしても、手術前の彼と同じ病気を患っていても伸び伸びと生きているオズワルドにしてもどこか無神経。結局みんな自分のことしか考えていないよね、というのは俗世の真理なんですがそれにしたってとことん悪い方にしか物事の運ばない主人公にはなんかもう……かわいそうだけど笑っちゃうごめん、みたいな。
デリケートな題材なだけに観賞中、つい感情にブレーキを掛けてしまいがちになるんですが(笑っていいのかな、とか)そこは実際に外見に関わる難病を抱えたアダム・ピアソンの自由奔放な演技に救われ、思考がほどけていく感覚がありました。
煩わしいものでしかないと思い込みがちなコンプレックスは、他者にとって、もしくは自分自身にとっても視点を少し変えればその人の、なくてはならない個性なのかもしれません。それがよい方に作用するか悪い方に作用するかはともかく、なくなってしまえばいいというものでもないのかもしれないなと、そんなことを考えたり、考えなかったりした次第です。

プレデター バッドランド
『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』『スーパーマン』あたりと並べて迷ったタイトルです。
アイデアが溢れる縦横無尽なアクション(上半身と下半身の共闘とか)が楽しかったし、血のつながりに囚われた不健全な関係を断ち切って、信頼に値する仲間を見つけるお話も好き……というか、そういう話をプレデターで観ることになるとは思わなかった(褒めてますよ)。
教皇選挙
コンクラーベの裏側やシスティーナ礼拝堂の内部のようすがおもしろかったし、平均年齢高めの個性溢れるおじさまスターたちの競演も見ごたえたっぷり。セットや衣装もゴージャスで「端正な大作」然とした佇まいがとても好ましかったのですが、インターセックスに関わる落としどころがやや唐突で引っかかってしまいました。
このあたりの畳み方がもっと自然だったらぜったい10作品に選んでいたのだけど。

ファイナルデッドブラッド
まさかの「ファイナル・デスティネーション」シリーズ、14年ぶりの新作です。『デッドブリッジ』
できれいに終わっていたにもかかわらず、今回も超おもしろかったんですけれども。
わざわざこのポジションに置いたのは、病を押して本作に挑んだトニー・トッドがアドリブで語る場面が素晴らしかったから。紡がれる言葉はシンプルだったけど目に宿った光は壮絶で、心からの言葉なんだなと思うと涙が止まらなくなりました。映画の奇跡ってこういうこと。
おわりに
というわけで、私の2025年の映画鑑賞振り返りですが。ざっくりとした印象としては、アイデア、見せ方、テーマ性など、どこかひとつ、もしくは複数が新鮮な作品が多くあった気がしています。
強く前向きだけれど善人とは言い難い女性主人公(『MaXXXine マキシーン』)、一生ネタにできそうな『サブスタンス』の若返り方法、『顔を捨てた男』のコンプレックスに関わる切り口や、『シンシン SING SING』とか(当記事では触れてませんが)『ジェリーの災難』みたいなセミドキュメンタリーも……新しい手法ではないのかもしれませんが、私自身がおもしろさに気づけたということで新鮮でした。ドキュメンタリーといえば、ビッグフットの生態をドキュメンタリータッチで描く『サスカッチ・サンセット』
もおもしろかったな。
年々洋画が振るわなくなってきて公開が見送りになったりもしてますが、一方で配信が充実してきているし、その気になればインポートの入手も容易。時代としては選べる状況になってきているじゃないかということで、凹むことなくこれからも洋の東西を問わず気になるタイトルを追いかけていこうと思います。
2026年も鑑賞記録はできるだけ残していきたいので、よろしければまた足をお運びいただければ幸いです。