【2026年】新作映画感想文#1『シャドウズ・エッジ』『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』『マッド・フェイト 狂運』『コート・スティーリング』『アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし』(ネタバレあり)

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昨年後半から年をまたいでバタついた家のフルリフォームで疲れてしまったのか、2月に入って盛大に体調を崩してしまい、今さら年始からこっち観た映画の感想文です。

  • シャドウズ・エッジ(T・ジョイ梅田)
  • 世界一不運なお針子の人生最悪な1日(テアトル梅田)
  • マッド・フェイト 狂運(テアトル梅田)
  • コート・スティーリング(TOHOシネマズ梅田)
  • アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし(テアトル梅田)

画像:映画.com

そんな昔の映画の感想もういいよ、と思う方もいらっしゃるかと思いますが、ここは私が好きに書き散らかす場所なので悪しからずご容赦ください。

尚、『シャドウズ・エッジ』『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』は正確には2025年12月の公開作品ですが、2026年に入ってから観たのでこちらにカウントしました。

当ブログはネタバレをあまり気にしていません。オチに関わる事柄についての完全なネタバレは極力避けていますが、その線引きには個人差もあります。気になる方はご注意ください。

目次

シャドウズ・エッジ(T・ジョイ梅田)

マカオの街で、神出鬼没のサイバー犯罪集団による巧妙な強奪事件が続発。監視システムも乗っ取られ捜査に行き詰まった警察は、切り札として、すでに現役を退いた追跡のエキスパート・黄徳忠に協力を依頼する。警察の若き精鋭たちとチームを組んだ黄徳忠は、昔ながらの捜査術と最新テクノロジーを駆使し、「影」と呼ばれる元暗殺者が率いるサイバー犯罪集団を追う。

引用:映画.com

原題:捕風追影/2025年/香港・中国合作/141分/配給:クロックワークス
監督/脚本:ラリー・ヤン
出演:ジャッキー・チェン/チャン・ツィフォン/レオン・カーフェイ/ツーシャー/JUN/チェイニー・リン/ワン・ツェンウェイ/リー・ジョークン

元ネタ『天使の眼、野獣の街』、韓国リメイク版『監視者たち』、いずれも未見(TSUTAYA DISCASに手配済みだけどまだ貸出中)のため比較することができないが、クライムもの、かつ世代交代ものとして、とてもキレイにまとまっていた。本家のランニングタイムは90分なので、かなりいろいろな要素(アクションやファンが期待するだろう若手スターの見せ場)を肉付けていったのだろうが、過不足を感じるところもなかったし、ジャッキーオマージュ満載のアクションも(ともすれば悪目立ちしそうだが)気にならなかった。

アクション演出、ジャッキー、レオン・カーフェイ2大スターの競演、若手との絡み方やバランス、クライム部分の話運び、全部完成度が高くてとにかく楽しかったし、シーンによって、同じ映画とは思えないくらいガラッと雰囲気の変わる美術も印象的だった。

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』に次いで、香港映画の熱量とクオリティの高さを再認識した。続編を予感させるラストだったが、ジャッキーが出るのか出ないのかが気になる。私は彼の熱心なファンということもないのだが、毎週のようにテレビ放送されるジャッキー映画を観て育った世代なので、健在っぷりが拝めるとやっぱりほっとするし元気が出る。

世界一不運なお針子の人生最悪な1日(テアトル梅田)

スイス山中の小さな町でお針子をしているバーバラ。亡き母から譲り受けた店は倒産寸前で、相談できる友人も恋人もいない。ある日、常連客との約束に遅刻した上にミスをして激怒させてしまった彼女は、その帰り道に麻薬取引現場に遭遇する。売人の男たちは血まみれとなって道路に倒れており、周囲には破れた白い粉入りの紙袋と拳銃、そして大金の入ったトランクケースが置かれている。バーバラの脳裏には「完全犯罪(横取り)」「通報」「見て見ぬふり」という3つの選択肢がよぎるが……。

引用:映画.com

原題:Sew Torn/2024年/アメリカ・スイス合作/100分/配給:シンカ
監督/編集:フレディ・マクドナルド/製作:フレッド・マクドナルド バリー・ナビディ セバスチャン・クリンガー ダイアマンティス・ザビツァノス ソクラティス・ザビツァノス/脚本:フレディ・マクドナルド フレッド・マクドナルド /撮影:セバスチャン・クリンガー/美術:ビビアン・ラップ/音楽:ジェイコブ・ターディン/キャスティング:シャロン・ハワード=フィールド ネイサン・ウィレイ 出演:イブ・コノリー/カルム・ワーシー/K・カラン/ロン・クック/トーマス・ダグラス/ベルナー・ビールマイアー/ベロニカ・ヘレン=ベンガー/キャロライン・グッドオール/ジョン・リンチ

監督のフレディ・マクドナルドが19歳の時に作った短編が、ジョエル・コーエンの目に留まり長編として生まれ変わったらしい。いや、正しくは、長編というよりもひとつのシチュエーションに3つの異なる展開が描かれるオムニバス形式である。つまり結末が異なる同じ話を3回見せられるわけだが、これが思ったより、そもそもそのシチュエーション(針と糸だけでピンチを脱する)が楽しいのでおもしろい。単純に次はどうくるのかという興味あるし、緊張感を持続させる演出もソツがなく、登場人物もちょっとクセありでいい意味でいろんな事が引っかかる。さすがジョエル・コーエンの目に留まっただけある。

ただ映画を見終わってから、元となった短編があることを知って観てみたところ、やはりこれがいちばんおもしろかった。こちらは6分なので、主人公やその他登場人物の置かれた状況や人間性が描かれることもなく、話はひたすらオチへと向かう。ごくシンプルなだけに、おそらくこの監督の最大の持ち味であろうスタイリッシュさやキレのよさ、スマートな雰囲気が際立っていた。

監督は2000年生まれとのこと。小さい頃からお父さんの仕事の手伝いとしてストップモーションアニメを作っていたとかで、芸術的な素地の培われる環境で育ったようだ。アメリカ人ながらスイスにもルーツがあるようで、作品にもそれを感じさせる不思議な無国籍感が漂う。楽しみなクリエイターがまた1人増えた。

元となった短編「SEW TORN」

マッド・フェイト 狂運(テアトル梅田)

「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦」をメガヒットに導いたソイ・チェン監督が、同作の前に手がけたクライムスリラー。娼婦を標的にした連続猟奇殺人事件に巻き込まれた人々の運命を、コミカルなホラー演出と残虐描写を織り交ぜながら、圧巻の美術演出による独自の世界観で描き出す。

引用:映画.com

原題または英題:命案 Mad Fate/2023年/香港/108分/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
監督:ソイ・チェン/製作:ジョニー・トー/脚本:ヤウ・ナイホイ/撮影:チェン・シウキョン
出演:ラム・カートン/ロックマン・ヨン/ン・ティンイップ/チャン・チャームマン/ン・ウィンシー/ウォン・チンヤン/ピーター・チャン

『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』のソイ・チェン監督が2023年に手掛けた作品で、脚本が『シャドウズ・エッジ』のリメイク元『天使の眼、野獣の街』のヤウ・ナイホイ、製作にジョニー・トーが入っている。

香港映画のトップランナー勢揃いな上、最近の日本公開作2本のタイトルから想像すると、どんなエンタメ大作が出てくるのかと期待するが、実際は今作と同じくソイ・チェンとジョニー・トーがタッグを組んだ2009年の映画『アクシデント 意外』の雰囲気が近い。つまり若干チューニングが難しいタイプの作品である。

どこへ向かうのか予測不能な物語を力業で「アリ」にしていくところは、古式ゆかしい香港映画らしさがあって好ましく、私的最大の見どころはラム・カートンの快演だった。

コート・スティーリング(TOHOシネマズ梅田)

1998年、ニューヨーク。かつてメジャーリーグのドラフト候補になるほど野球で将来を嘱望されたハンクだが、運命のいたずらによって夢は潰え、今はバーテンダーとして働きながら恋人のイヴォンヌと穏やかな日々を送っていた。そんなある日、変わり者の隣人ラスから突然ネコの世話を頼まれる。親切心から引き受けたのもつかの間、街中のマフィアたちが次々と彼の家に殴り込んでくる。ハンクは、自分が裏社会の大金絡みの事件に巻き込まれたことを知るが、時すでに遅かった。警察に助けを求めながら逃げ回る日々を送る中で、ついにある悲劇が起こる。ついに堪忍袋の緒が切れたハンクは、自分を巻き込んだ隣人やマフィアたちへのリベンジを誓う。

引用:映画.com

原題:Caught Stealing/2025年/アメリカ/107分/配給:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント/PG12
監督:ダーレン・アロノフスキー/製作:ジェレミー・ドーソン ディラン・ゴールデン アリ・ハンデル ダーレン・アロノフスキー/製作総指揮:アン・ロアク チャーリー・ヒューストン タラク・ベン・アマール モハナド・マラス/原作:チャーリー・ヒューストン/脚本:チャーリー・ヒューストン/撮影:マシュー・リバティーク/美術:マーク・フリードバーグ/衣装:エイミー・ウエストコット/編集:アンドリュー・ワイスブラム/音楽:ロブ・シモンセン
オースティン・バトラー/レジーナ・キング/ゾーイ・クラビッツ/マット・スミス/リーブ・シュレイバー/ビンセント・ドノフリオ/ニキータ・ククシキン/ユーリー・コロコリニコフ/ベニート・マルティネス・オカシオ/グリフィン・ダン

予告を見た時点ではエンタメ要素強めな印象。アロノフスキーらしからぬ映画だなと思ったが、実際に本編を鑑賞すると、案外人はガンガン死ぬ。しかもなかなか痛そうな感じで死ぬ。主人公はうまくいかなかった過去に囚われがちで冴えないながらも、ささやかな日々の中で大切にしてきたものを容赦なく奪われて……って、なんだ、わりとちゃんといつものアロノフスキーじゃないの。

イケメンなんだけどイマイチ華のない主人公を演じるオースティン・バトラーを筆頭に、彼からいろいろなものを奪っていく、イケメンとはちょっと違うけど存在感だけはやたらあるヴィンセント・ドノフリオやリーブ・シュレイバー、マット・スミスら脇を固める個性派たちの競演が楽しいが、個人的にはアロノフスキーとは「π」からのお付き合い、マシュー・リバティークが活写する、私がリアルタイムで憧れた、まだ殺伐とした一角も残る90年代のニューヨークを忠実に再現した美術が美しかった。昨年一躍話題となった「キムズビデオ」も映っていた。

アグリーシスター 可愛いあの娘は醜いわたし(テアトル梅田)

スウェランディア王国のユリアン王子は、すべての淑女の憧れの的。母レベッカの再婚でこの国にやってきたエルヴィラもまた、王子の花嫁になることを夢見ていた。新しい家族となった義妹アグネスは美しい女性だが、一方のエルヴィラは矯正器具に覆われた口元、ふくよかな体形、こじんまりとした鼻、つぶらな瞳という控えめな容姿だった。そんな中、アグネスの父が急逝したことで事態は一変。レベッカはアグネスを貶め、エルヴィラを王子の花嫁にするため、手段を選ばず彼女に美を施していく。やがて、王子の花嫁候補を集めた舞踏会が開かれるが……。

引用:映画.com

原題:Den stygge stesøsteren/2025年/ノルウェー・デンマーク・ポーランド・スウェーデン合作/109分/配給:スターキャットアルバトロス・フィルム
監督:エミリア・ブリックフェルト/製作:マリア・エケルホフド/脚本:エミリア・ブリックフェルト/撮影:マルセル・ザイスキンド/美術:サビーヌ・ビード クラウディア・クリムカ=バルツチャク/編集:オリビア・ニーアガート=ホルム/音楽:コーダ ビルデ・トゥーブ
出演:リア・マイレン/アーネ・ダール・トルプ/テア・ソフィー・ロック・ネス/フロー・ファゲーリ/イサーク・カムロート/マルテ・ゴーディンゲル

童話「シンデレラ」をベースとしたボディ・ホラーで、持って生まれた体型や顔立ち、最終的には男ウケするか否かというところにしか存在価値を見いだされない世界で狂っていく女性が主人公なあたり、似たモチーフを扱いつつも加齢がクローズアップされていた『サブスタンス』より若い世代に響きそうだ。

とはいえ麻酔なしで鼻を削り、つけまつげを肌に直接縫い付け、足を切り落とす等々のゴア描写は容赦がなくてなかなか凄まじく、ここは案外愚かでキュート、笑える場面も多かった『サブスタンス』より直接的に「痛」く、好みの分かれる嫌いはある。

さらには「シンデレラ」なので、シンデレラの義姉にあたる主人公は王子とは結ばれない。だが王子はクズでしかないので結ばれない方が幸せだし、だったらシンデレラがかわいそうなのかといえば、彼女は彼女で最初は主人公の容姿をイジりまくっていたし、馬番の男のことはセフレとしか思ってなさそうだし大概である。

唯一まともなのはラストに活躍する主人公の妹ちゃんだけだが、今後の人生を思うとハードモードの予感しかなくて切ない。このあたりも「気の持ちよう」である程度前向きに生きられるはずの現代の女性を描く『サブスタンス』より重く厳しい。

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