パンチングレザーとは、革に連続した細かな穴を空け、通常より通気性を持たせた皮革のことです。
わたしは2023年の夏に、カドヤのパンチングレザージャケットを購入しました。
夏に革ってどうなんだろう、暑くないかな。もしかしたら真夏になったら、布製の夏用ジャケットでないと厳しいかもしれない…。
実は購入後、しばらくのあいだは不安がいっぱいだったのですが、けっきょくわたしはその夏、パンチングレザージャケットのみで過ごしました。
この記事では、メッシュタイプのジャケットに比べると利用者の少ないパンチングレザージャケットの使用感についてまとめています。
特にレザージャケットの老舗、カドヤでの今回の購入品については、サイズ感や色展開もできるだけくわしく記載しましたので、今後、購入を検討される方の参考になれば幸いです。
買ったのはこれ
1930年代から皮革を扱い続けるカドヤが、長年の経験を生かして製作したというパンチングレザージャケット(PL-SW LADY/グレー)です。
カドヤならではのポイントは2点、
- 5ミリ間隔で施された直径2ミリの通気孔
- 皮革の表面に施されたエンボス加工
これが工夫を重ねた末の、通気性と強度の最良バランスなのだそう。
こういった数字は素人には実感しづらいですが、たしかに相方のパンチングレザーパンツ(写真左、某ブランドの製品)と比較しても穴のサイズは大きめでした。
さらにエンボス加工によって、やわらかさと型崩れなどを防止する強度を獲得しているようです。
レディースの場合、黒とグレーの2色展開。わたしは夏なので迷わずグレーを選びました。
デザインは、シンプルなライダースとセミダブルタイプの2種類があり、わたしが購入したのはセミダブルのタイプです。
こちらはファスナーがやや斜めに配置され、ラペル部分をスナップで留めて、折り返して使用することもできるようになっています。
またシンプルなライダースタイプに比べて、若干丈が長く、ウェスト部分がほんのわずかにシェイプされたデザインになっており、わたしが気に入ったのはこのポイントです。
ぱっと見ではわからない程度の違いですが、シンプルライダースはよりメンズライク、セミダブルはやや女性らしさが感じられる気がしました。
そこは体格に合うか合わないか、もしくは好みの部分だと思うので、購入時はできるだけ両方試着していだたきたいところです。
ちなみにサイズですが、身長160センチ、ユニクロなど一般的な衣料品を購入する際のサイズはたいていSのわたしが選んだのはWS。
これで、裏地も兼ねた吸汗速乾性メッシュ生地のポケット部分にしっかりプロテクター(肩、肘、背中、胸部)を装着して、ジャストサイズで使用することができています。
早速使ってみました
はじめて着用したのは6月中旬、気温25度くらいのタイミングでした。
日中はもうTシャツでも汗ばむくらいの陽気でしたが、ジャケットを着用して走り出してすぐに出た言葉は「す、涼しい!」
前日まで普通のメッシュジャケットを着ていたのですが、明らかにそれより涼しかったです。
理由はおそらく、ひとつひとつの穴が大きいから。走行風は勢いがあるため、しっかり吹き抜けていくのでしょう。
ただ、真夏になって気温35度前後となってくると、風そのものが体温と変わらない熱風になるため、吹き抜けても涼しさを感じることができません。
そうなると「素材自体の薄さと軽さに軍配が上がるメッシュジャケットのほうがいいのでは?」という気がしなくもないのですが、ここでも皮革製品独自の特性があり、そうとも言えないことに気付きました。
くわしくは以下、一般的なメッシュジャケットと比べて優秀な点とイマイチな点をまとめています。
あくまでわたし個人の感想ですが、よろしければご参照ください。
メッシュジャケットと比較してみました
比較に使ったのは、わたしがカドヤのパンチングレザージャケットを購入するまで使用していたメッシュジャケット(写真右)です。
レディースのバイクウェアを置いている店なら大抵取り扱いのあるメジャーなブランドのもので、2シーズン着用、記事はその際の体感で作成しています。
よって内容は、数値などを測定して厳密に比較したものではありません。
すべてわたし個人の体験談となりますので、ご了承ください。
パンチングレザージャケットが一般的なメッシュジャケットより優秀な点
安全性
言わずもがな、これはパンチングレザージャケットに軍配が上がります。
それは、レースでもいわゆる「革ツナギ」が用いられていることからも明白。
革にはそれ自体にもある程度の厚みがあり、かつこすれにも強いため、安全性という点に関しては大いにアドバンテージがあります。
断熱性
これが前項、使ってみての感想で書いた意外だった点。
風が吹き抜けても涼しさを感じられないレベルの暑さになったとき、メッシュジャケットより不快感を感じなかった理由です。
真夏の強烈な日差しに晒されていると、わりとしっかりしたメッシュジャケットを着ていても、背中や腕がジリジリと熱くなってくることがありませんか?
パンチングレザージャケットの場合、それがまったくありません。
革はエンジンからの熱をカットするヒートガードとしても使われる素材なので、断熱性がとても高いのです。
体内にこもる熱より照りつける日差しのほうが強烈な昨今の夏の場合、通気より遮熱を優先したほうが涼しく感じられます。
これは想定外の効果だったこともあり、わたしにとってはかなりのプラス要素となりました。
耐久性
革製品には、経年変化を劣化ではなく味として楽しむという文化があります。
5年、10年と時を刻むたびに増す風合いを味わうことが前提ともなっているため、リペアやカスタムを行っているお店もたくさんあります(カドヤでももちろん行われています)。
自分でもブラシをかけたりオイルを馴染ませたり、良い状態を保つためには手入れが必要で、ずさんな管理を行うとカビが生えたりすることもありますが、ひとつのものを長く愛用したいと思うなら、革はとても魅力的な素材です。
パンチングレザージャケットが一般的なメッシュジャケットよりイマイチな点
(メッシュジャケットに比べると)重い
これは、特に女性にはネックとなりがちな点ですが、どうすることもできません。
ですが、重いのはあくまでメッシュジャケットと比較した場合の話であって、通常のレザージャケットと比較すると、メッシュレザージャケットは穴が空いているぶん重量はずいぶん軽くなっています。
わたしは冬もレザージャケットを使用しているため、はじめてパンチングレザージャケットを手に取った時は「革なのに軽い!」という感覚の方が勝っていたような気がします。
一般的に高価
メッシュジャケットもパンチングレザージャケットも価格はピンキリとなりますが、一般的には革を使用したパンチングレザージャケットの方が高価です。
そのぶん耐久性や安全性でペイできると割り切るかどうかはその人の考え方次第。その他の長所短所や、見た目の好みも含めて、じっくり検討したいところです。
手入れが必要
洗濯機に気軽に放り込むことの出来るメッシュジャケットと違い、パンチングレザージャケットは家庭の洗濯機で洗うことはできません。
カドヤをはじめ皮製品を扱う専門店ではクリーニングを行っているところも多いですが、高価なので頻繁に利用するのは非現実的。
夏に着用するものなので衛生面が気になる方もいらっしゃるかと思いますが、わたしは着用後、
- ブラシをかける
- 裏地側をパストリーゼ等で除菌
- サーキュレーターで風を当てる
- シーズン前後には皮製品用トリートメント、ラナパーを塗り直す
以上の手順で手入れをしています。
相方(メンズ)もだいたい同じ方法でケアしていますが、お互い臭いなどが気になったことはありません。
強者は自己責任のもと、家で手洗いをすることもあるようですが、わたしは当面この方法+汚れが気になってきたらクリーニングで対応の予定です。
おわりに
パンチングレザージャケットには長所も短所もありますが、わたし個人の感想としては「思ってたよりもずっと快適」です。
涼しく過ごすためにはとにかく薄着がいいと思ってきましたが、そもそも体温を越える気温だと何を着ていても暑いです。
そうなると涼しさを得るというよりも、まずはどの暑さ(熱さ)を軽減するか、という選択になってくるような気がします。
さらに見た目や安全性といったメリットを鑑みた上で、わたしはパンチングレザージャケットがとても気に入りました。
特にカドヤはレディースの取り扱いもあり、クリーニングやリペアなどのアフターケアも充実しています。
デザインもシンプルでスッキリ着られるものが多いので、気になった方はぜひオンラインショップや実店舗を訪ねてみてください。