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2024年8月に観た新作映画の感想を書いています。
自分のための覚え書き的なものなので、ごく簡単なメモのような内容ですがご了承ください。
ラインナップはこちらです。
- ツイスターズ(109シネマズ大阪エキスポシティ/4DX)
- 密輸 1970(大阪ステーションシティシネマ)
- フォールガイ(大阪ステーションシティシネマ)
- ソウルの春(T・ジョイ梅田)
- ヤング・ウーマン・アンド・シー(配信のみ/Disney+)
- ハンテッド 狩られる夜(配信/Prime Video)
- セーヌ川の水面の下に(配信のみ/Netflix)
8月は旅行へ行ったりもしたので、劇場鑑賞はやや少なめ。でも劇場で観た作品はいずれも夏にぴったりの景気のよいエンタメ作品でした。
配信鑑賞分もハズレなしだったので、環境が許す方はぜひ。
ちなみに今月、いちばん気に入ったのは『密輸 1970』。韓国映画はあまりくわしくないのですが、この機会にいろいろ掘ってみようかしらと思っています。
オチに関わるネタバレは極力避けていますが、内容には触れています。気になる方はご注意下さい。
ツイスターズ(109シネマズ大阪エキスポシティ/4DX)
ニューヨークで自然災害を予測して被害を防ぐ仕事をしている気象学の天才ケイトは、故郷オクラホマで史上最大規模の巨大竜巻が連続発生していることを知る。彼女は竜巻に関して悲しい過去を抱えていたが、学生時代の友人ハビから必死に頼まれ、竜巻への対策のため故郷へ戻ることに。ケイトはハビや新たに出会ったストームチェイサー兼映像クリエイターのタイラーらとともに、前代未聞の計画で巨大竜巻に挑む。
原題:Twisters/2024年/アメリカ/122分/配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:リー・アイザック・チョン/製作:フランク・マーシャル パトリック・クローリー/製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ トーマス・ヘイスリップ アシュリー・ジェイ・サンドバーグ/原案:ジョセフ・コジンスキー/脚本:マーク・L・スミス/撮影:ダン・ミンデル
出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ/グレン・パウエル/アンソニー・ラモス/ブランドン・ペレア/キーナン・シプカ/デビッド・コレンスウェット/モーラ・ティアニー/サッシャ・レイン/ハリー・ハッデン=パットン/ダリル・マコーマック/トゥンデ・アデビンペ/ケイティ・オブライアン/ニック・ドダーニ/ポール・シェアー
1996年に公開されたディザスター映画『ツイスター』の続編ということだったので、そのつもりで観に行きましたが、終わってみれば96年版との関連は実質なし。どちらかというとリブート作品的なつくりとなっており、となると気になるのはどこがどう変わっているのかということなんですが。
わたしのような単純な人間がいちばん最初に考えるであろう「はいはい、今のテクノロジーで竜巻やりたいんでしょ」というのは、全然メインディッシュではありませんでした。特にビジュアルは35mmフィルムで撮影されており、どちらかというと往年の映画のざらついた質感の再現を目指しているようで、バッキバキのVFXでいろんなものが飛びまくるのだろうと思っているとそのあたりは案外おとなしめです。
では今回のリブート、いったい何が見どころとなっているのかというと、それはズバリ人間ドラマ。荒唐無稽なアドベンチャーよりも人助けを優先するなどドラマの切り口も現代的、メインキャストふたりの恋愛模様も、互いの価値観やリスペクトできる部分をしっかりすりあわせながら進んでいく、ロマンスというよりもバディ感濃厚な今の時代に即したトーンで進みます。とりわけ一見粗野な田舎男(しかもYouTuber)ながら、相手のことを思いやり、誠実に信頼関係を築いていくタイラー(グレン・パウエル)のキャラクターは新鮮で、見た目の紋切り型な男っぽさからついつい警戒してしまいがちになる自分自身の偏見、先入観にも気付かされました。
この人間ドラマの細やかさは、完全に本作の監督、リー・アイザック・チョンの持ち味だなと感じます。またそれが展開するいかにもアメリカ(しかも古き良き時代を彷彿とさせる)な雄大なロケーションも完全に同監督の前作『ミザリ』。そしてそんなドラマとルックの融合は、なぜか人種や性別に関わらずグッとくる原風景的な普遍性を湛えているような気がして、本作が記録的に大ヒットしているというのも、なるほど納得の現象ではあるのですが。
個人的な好みとなると、わたしはやはり96年版派のような気がします。おそらく今観るといろいろな部分で古くささが否めないのかもしれませんが、ヘレン・ハントが演じていた主人公ジョーの、まるで取り憑かれているみたいな竜巻への執着、彼女のチーム(フィリップ・シーモア・ホフマンがいる!)の、竜巻を追って、途中でガツガツごはんを食べて、また竜巻を追いかけて行くみたいななテンションの振り切れ方、クライマックスの、ありえない規模の竜巻出現シーンのけれんみなどなど、2時間弱の映画を終始貫く、どこか異常な高揚感。わたしはなぜかそれがたまらなく好きなんです。
96年版の監督は『スピード』のヤン・デ・ボン。アイザック・チョン監督とはかなり趣の異なるクリエイターですが、撮影監督(初期のバーホーベン作品など)としても映画監督としても大作を数多く手掛けた実力派であることは間違いありません。未見の方はこれを機会にぜひ一度ご覧になってみてください。お気に召していただけるかどうかはわかりませんが、ディザスター映画のハシリということで映画史的にもそれなりに重要な作品です。観ておいて損はないんじゃないかなと思います。
密輸 1970(大阪ステーションシティシネマ)
1970年代半ば。韓国の漁村クンチョンでは海が化学工場の廃棄物で汚染され、海女たちは失業の危機に瀕していた。リーダーのジンスクは仲間たちの生活を守るため、海底から密輸品を引きあげる仕事を請け負うことに。しかし作業中に税関の摘発に遭ってジンスクは逮捕され、親友チュンジャだけが現場から逃亡する。2年後、ソウルからクンチョンに戻ってきたチュンジャは、出所したジンスクに新たな密輸の儲け話を持ちかける。密輸王クォン、チンピラのドリ、税関のジャンチュンらさまざまな者たちの思惑が入り乱れるなか、海女たちは人生の再起をかけた大勝負に身を投じる。
原題:Smugglers/2023年/韓国/129分/配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
監督:リュ・スンワン/脚本:リュ・スンワン キム・ジョンヨン チェ・チャウォン/撮影:チェ・ヨンファン
出演:キム・ヘス/ヨム・ジョンア/チョ・インソン/パク・ジョンミン/キム・ジョンス/コ・ミンシ
韓国映画にさほどくわしくないわたしでも知ってるリュ・スンワン監督作品です。最近は『軍艦島』や『モガディシュ 脱出までの14日間』などわりとスケールの大きな実録ものを手掛けていた感じでしたが、今回はひさびさのがっつり娯楽作。しかも舞台は1970年代、メインキャストの大半が女性で海女ものって、それってもしかして、1950年頃流行った日本の海女映画みたいなやつなのかしら。やだ楽しそう!
そんなわたしの期待は裏切られることはなく、本作は129分がっつり濃厚なアクションあり、繊細な駆け引きありのコンゲーム的面白さを踏襲したエンタメ作品となっていました。そして2024年に敢えて作られた海女ものということで、過去の作品と明らかに異なるのはやっぱり女性たちの見せ方。2024年の海女はセクシャルな記号でもなければ、男のために戦ったりもしない。戦うのは自分のため、もしくは自分が選んだものを守るため。
そんなコンセプトだけでもうこっちはテンションダダ上がりなのですが、それをさらに盛り上げる話運びもこれまたばっちり手際がよくて。全年齢向なのに状況の悲惨さや壮絶さが常にちゃんと伝わってくるし、中盤の肉弾アクションにしても、ちょっとマンガっぽい『キングスマン』みたいなやつながら、ちゃんとエモーショナルだから軽くない。そしてもうひとつ見どころとなるのが海女ならではの水中戦なんですが。そこれがまたすごいんですよ、カットが割れない!水中なのに!!
水中戦というと往々にして「なんかすごく大変そうなのは分かるけど、いまいち何をしているのかわからない」ことが多かったわけですが、カメラの進化なのかテクノロジー(ポスプロ)的な進化なのか、本作ではその精度が大きく引き上げられました。水中という環境なら男女の筋力差もハンデになりにくいし、海女だからこれでもかと水中の利を生かしてもくる。一見ライトな娯楽作品なのに、細かなところでしっかりこだわりとクオリティの高さが伝わる、さすがベテランのお仕事という感じの仕上がりです。
もちろんアクションだけでなく、キャラクターもよかったです。意外なポジションの人物が信頼の置ける筋の通った人として設定されていたり、普通ならお荷物になってしまいかねない女性キャラが、持てる個性を利用して仲間のピンチを救ったり。ステレオタイプに陥らない気遣いがちゃんとありながら、昔の東映ヤクザものみたいなアクの強さが両立していて、さりげない、けどどのベクトルにも抜かりない。
というわけで、すべての点でレベルが高くて、とにかくめちゃくちゃおもしろかったです。もし今、何を観ようか迷っている人がいたら、まずはこの作品をおすすめします。たぶん今年のベスト10クラス。それくらいよかったです。
フォールガイ(大阪ステーションシティシネマ)
大怪我を負い一線から退いていたスタントマンのコルトは、復帰作となるハリウッド映画の撮影現場で、監督を務める元恋人ジョディと再会する。そんな中、長年にわたりコルトがスタントダブルを請け負ってきた因縁の主演俳優トム・ライダーが失踪。ジョディとの復縁と一流スタントマンとしてのキャリア復活を狙うコルトはトムの行方を追うが、思わぬ事件に巻き込まれてしまう。
原題:The Fall Guy/2024年/アメリカ/127分/配給:東宝東和
監督:デビッド・リーチ/製作:ケリー・マコーミック デビッド・リーチ ライアン・ゴズリング ガイモン・キャサディ/製作総指揮:ドリュー・ピアース ジェフ・シェイビッツ/原案:グレン・アルバート・ラーソン/脚本:ドリュー・ピアース/撮影:ジョナサン・セラ/編集:エリザベット・ロナルズドッティル/音楽:ドミニク・ルイス
出演:ライアン・ゴズリング/エミリー・ブラント/ウィンストン・デューク/アーロン・テイラー=ジョンソン/ハンナ・ワディンガム/テリーサ・パーマー/ステファニー・スー
ベースは80年代に日本でも放送されていたというテレビシリーズ『俺たち賞金稼ぎ!!フォール・ガイ』(主演はなんとリー・メジャース、映画でもちょっとだけカメオ出演しています)。内容はかなりアレンジされていますが、スタントマンがスタントスキルで実際のピンチを脱していくというパターンはそのままに、スタントマンだからって現実のトラブルにこうも都合良く対処できるわけないよ、というリアリティに関しては、かなり振り切ったコメディテイストを添加することでうまく切り抜けています。
監督は元スタントマンのデビッド・リーチなので、アクションに関しては文句なし。どこを取ってもひたすら楽しいスタント満載の作品なのですが、わたしが特に気に入ったのは、作中、主人公コルトがスタントマンとして参加する映画『メタルストーム』の撮影現場で行われるスタントの数々。バックステージものってそれだけでもうじゅうぶん楽しかったりするものですが、コルトも含めスたタントチームと技術部スタッフが一丸となり、それぞれが自分のスキルを生かしアクてションをこなしたり、時にはアクシデントに対応したりするところが超胸アツでした。
また同シーンには新旧さまざまなジャンルの映画の小ネタも散りばめられているので、それを探すのもお楽しみポイント。あとエミリーブラント演じる映画監督、ジョディ・モレノも印象的で。そもそも映画監督の役に女性って、めずらしくないですか。もしかしたらわたしが知らないだけかもしれませんが、メガホン持ってる女性がこうして普通に映画に登場しているということにちょっと感動したし、クライマックスで発揮される彼女の采配も素晴らしかったです。
ソウルの春(T・ジョイ梅田)
1979年10月26日、独裁者と言われた韓国大統領が側近に暗殺され、国中に衝撃が走った。民主化を期待する国民の声が高まるなか、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン保安司令官は新たな独裁者の座を狙い、陸軍内の秘密組織「ハナ会」の将校たちを率いて同年12月12日にクーデターを決行する。一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンは、部下の中にハナ会のメンバーが潜む圧倒的不利な状況に置かれながらも、軍人としての信念に基づいてチョン・ドゥグァンの暴走を阻止するべく立ち上がる。
原題:12.12: The Day/2023年/韓国/142分/配給:クロックワークス
監督:キム・ソンス/脚本:ホン・ウォンチャン イ・ヨンジュン キム・ソンス
出演:ファン・ジョンミン/チョン・ウソン/イ・ソンミン/パク・ヘジュン/キム・ソンギュン/チョン・マンシク/チョン・ヘイン/イ・ジュニョク/チョン・ドンファン/キム・ウィソン/ユ・ソンジュ/アン・ネサン/チェ・ビョンモ/パク・フン/キム・ソンオ/アン・セホ
今月2本目の韓国映画は『タクシー運転手』や『KCIA 南山の部長たち』に連なる韓国現代史シリーズです。
これは何が凄いって、まだそれほど時間の経っていない自国の黒歴史を、有名キャスト勢揃いで堂々たる大予算のエンタメ作品に仕上げているところ。名前などは一部ぼかしたりもしてるみたいですがほとんど特定可能だし、正直実話ベースとは思えないレベルのキャラの濃さで、一切の妥協なしに狂気の男を演じきったファン・ジョンミン、さすがです。
もちろん内容も、怒濤のようだっただろう一晩の出来事と複雑な人間関係をわかりやすくまとめ、ちゃんと山場も作られています。そのとき何が起こっていたのかが(創作も多く混じっているんだろうけど)きっちり理解出来るし、余分な要素(恋愛とか家族とか)もほとんどなし。わたしは日本の映画はあまり観ないので分かったようなことは言えないのですが、最近の(昔のはそうでもない)邦画実録もの、たとえば観た作品だと『新聞記者』とか『福田村事件』とかなんですが、どうにも本筋以外に寄り道だったりブレがあって、とてももったいないと感じました。それがサービス精神から来るものだったのか、何らかの忖度だったのかは分かりません。ですがこういうポリティカルな実録もの映画って、まずはちゃんとメインとなるべき事実を軸にしてほしいと思います。脚色も、肉付けというよりいっそ本質以外のところをさらに削ぎ落としていくための緩衝材くらいの手段と思った方がいいんじゃないのかなと思うのです。
その点本作の徹底的な善悪の対立構造は潔かったです。実際はもっと複雑でやむを得ない事情があっての顛末なんだろうということは心得ておかなくてはならないと思うのですが、やっぱりシンプルなだけに明快、なにより圧倒的におもしろくて、やや長めの上映時間も全く気にならなかったです。
ヤング・ウーマン・アンド・シー(配信/Disney+)
1905年、アメリカのニューヨークで生まれ育ったトゥルーディ・イーダリーは、目標を達成するためにはどんなことにも真摯に取り組む努力家だった。まだ女性が泳ぐことが一般的でなかった当時、世間から白い目で見られながらもあきらめず、姉や献身的なコーチらに支えられながら、1924年パリオリンピックに出場を果たす。そして彼女は、屈強な男だけが達成できると言われた英仏海峡を泳いで渡ることに挑戦しようと決意。女性には不可能だという声をはねのけ、困難に立ち向かっていく。
原題:Young Woman and the Sea/2024年/アメリカ/131分/配信:Disney+
監督:ヨアヒム・ローニング/製作:ジェリー・ブラッカイマー チャド・オマン ジェフ・ナサンソン/製作総指揮:ジョン・G・スコッティ デイジー・リドリー ヨアヒム・ローニング/脚本:ジェフ・ナサンソン/撮影:オスカル・ファウラ/編集:ウナ・ニ・ドンガイル
出演:デイジー・リドリー/ティルダ・コブハム=ハーベイ/ススティーブン・グレアム/キム・ボドゥニア/クリストファー・エクルストン/ジャネット・ハイン/グレン・フレシュラー/ショーン・クリフォード/オリーブ・アバクロンビー/リリー・アスペル/アレクサンダー・カリム/アレックス・ハッセル
1926年、女性ではじめてドーバー海峡(60キロほどだが、世界的にも難所とされてる)を泳いで横断したアメリカ人、トゥルーディ・イーダリーの半生を描いた実話ものです。今よりずっと女性が生き辛かった時代、諦めず困難に立ち向かい、夢を叶えたアスリートのお話と言ってしまうと「ああ、最近よくあるやつね」と、斜に構える向きもあるかもしれません。ですが彼女のドーバー海峡横断は史上6人目。しかもそれまでの記録を2時間以上更新したのだから、性別とか抜きにしてもかなりすごいことを成し遂げた人なんですよ。
で、本作は、そんな彼女が水泳を志した幼少期から、パリオリンピック出場を経てドーバー海峡横断に成功するまでを、(IMDbによるとわりと大胆な)脚色も交え、家族愛や師弟の信頼関係なども絡めつつドラマチックに映像化。ちょっと盛りすぎじゃないかと思う部分もなきにしもあらずなのですが、トゥルーディを演じるデイジー・リドリーの堂々とした存在感、こだわりの感じられる美術や衣装に、全体を貫く落ち着いたトーンなどが手伝って、最初から最後まで気持ちよく作品世界に引き込まれます。想定外の驚きや衝撃がもたらされるようなタイプの作品ではありませんが、史実にそれなりに興味があり、視聴環境(Disney+)にあるならぜひ、おすすめです。
ちなみに、監督は『コン・ティキ』『パイレーツ・オブ・カリビアン 最後の海賊』など海ものを得意とするヨアヒム・ローニング。撮影は『イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密』や『怪物はささやく』のオスカル・ファウラ。プロデューサーにはジェリー・ブラッカイマーも名を連ねていて、どう考えても大作の布陣なんですが、今日この頃はそれでも配信スルーになっちゃうんですね。
ハンテッド 狩られる夜(配信/Prime Video)
製薬会社フィンザーでSNSマーケティングを担当するアリスは、不倫相手である同僚との密会後、深夜に夫のもとへ家路を急いでいた。その途中、人里離れたガソリンスタンドに立ち寄るが、従業員の姿は見あたらない。仕方なく店を出ようとした瞬間、突然どこからか銃弾が飛んできてアリスは腕を負傷し、彼女を心配して店に入ってきた不倫相手が射殺されてしまう。スマートフォンも撃ち壊され助けを呼ぶ手段はなく、スナイパーの目的すらわからないまま、悪夢のような一夜が幕を開ける。
2023年/アメリカ・フランス合作/95分/配給:トランスフォーマー/PG12
監督:フランク・カルフン/製作:アレクサンドル・アジャ アリックス・テイラー ノエミ・ドゥビド モリス・ラスキン/製作総指揮:ブラヒム・シウア バンサン・マラバル ロランス・クレル フランク・カルフン エミリー・ゴット フレデリック・フィオール セルゲイ・トーチリン セリーヌ・ドルニエ/脚本:グレン・フライヤー フランク・カルフン/撮影:スティーブン・ペティットビーユ/編集:ステファヌ・ローシュ
出演:カミーユ・ロウ/ジェレミー・シッピオ/J・ジョン・ビーラー/スタサ・スタニック
2015年のスペイン映画『シャドウ・スナイパー』のリメイクで、『ハイテンション』や『クロール 凶暴領域』の産みの親、みんな大好きアレクサンドル・アジャが製作で名を連ねています。ストーリーは上記あらすじの通りごくシンプルですが、新味は主人公を付け狙うのがスナイパーであるということ。つまり敵の姿は見えないので、ひたすら逃げることしかできません。
わたしがおもしろいと思ったのは、映画も中盤を過ぎようかというあたり。いよいよこの見えない敵とどう戦うんだろうと思い始めたあたりから、ちょっと変な展開になっていくところです。くわしい内容はネタバレになるので省きますが、どこから撃たれるか分からないか怖さはずっと持続しているんだけど、そこにプラスして謎スナイパーのもうひとつのやばさ、まともじゃなさが際立ってくる。
あとはわりと容赦なく、一片の期待を抱かせることもなく人が死んでいくところとか、ラストのまあ…ああ…そうなっちゃうんですかみたいな幕引きとか。どんでん返しというほどの意外な展開はないのでですが、ほどよく定石を外してくるところが90分うまく緊張感を担保してくれる感じです。
人を選ぶジャンルではありますが、個人的には大いにおすすめです。
セーヌ川の水面の下に(配信/Netflix)
海洋生物学者のソフィアは太平洋ゴミベルトに生息する巨大ザメを追跡調査していたが、そのサメに襲われてパートナーや仲間たちを殺されてしまう。3年後、パリで暮らすソフィアのもとに若き環境活動家ミカが現れ、ソフィアたちを襲った巨大ザメがセーヌ川にいることを知らせる。折しもパリでは、トライアスロン世界大会の開催が目前に迫っていた。さらなる惨劇を阻止するべく、セーヌ川を管轄する水上警察と協力して巨大ザメの調査に乗り出すソフィアだったが……。
原題:Sous la Seine/2024年/フランス/104分/配信:Netflix
監督:ザビエ・ジャン/製作:バンサン・ロジェ/製作総指揮脚本:サミー・バーチ/脚本:ヤニック・ダアン,モード・ハイバン,ザビエ・ジャン,ヤエル・ラングマン,オリビア・トレス/撮影:ニコラ・マサール
出演:ベレニス・ベジョ/ナシム・リエス/レア・レビアン/アンヌ・マリビン/森本渚/サンドラ・パルフェ/アクセル・ユストゥン/オレリア・プティ/マルビン・デュバル/ダウダ・ケイタ/イブラヒム・バ
サメが空から降ってくるでもなく、ゾンビだったり悪魔に憑かれたりもしていない、昨今めずらしいクラッシックなスタイルのNetflixオリジナルサメ映画です。
とはいえ、主人公は環境(サメ)を守ろうとしている海洋生物学者だったり、サメを保護したい主人公たちを傷つけるのは海中にあふれたゴミだったり。そんな中でも生きなくてはならないサメが淡水でも生活できるような進化を遂げてしまったり、最終的な舞台がタイムリーすぎるセーヌ川でのトライアスロン大会だったり、ちゃんと現代的なアイデアも盛り込まれており、パリが舞台のホラー映画ではちょいちょい出てくる地下墓地の使い方も楽しいです。
あとフランス映画らしいといえばビジュアルの美しさ。やや暗めのトーンの海(青)に青、血の赤が映える映える。ラストも昼ロー感溢れる大風呂敷広げまくりで、ネタじゃないサメ映画として普通にとってもおすすめです。