【2024年10月】配信で観た映画感想文『ナイトスイム』『パスト ライブス 再会』『アイズ・オン・ユー』全3本(ネタバレあり)

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2024年10月に観た新作映画の感想を書いています。

自分のための覚え書き的なものなので、ごく簡単なメモ程度の内容ですがご了承ください。

ラインナップはこちらです。

  • ナイトスイム(配信/Prime Video)
  • パスト ライブス 再会(配信/Prime Video)
  • アイズ・オン・ユー(配信のみ/Netflix)

10月の配信鑑賞作品で良かったのは、Netflixオリジナル(なんと)アナ・ケンドリック初監督作品『アイズ・オン・ユー』。

実際にあった女性ばかりを狙った連続殺人事件をベースにしているのですが、事件やシリアルキラーそのものを深掘りしていく(よくある)構成ではなく、そこからが女性が軽視される社会に関して深く言及しているところが新鮮でした。

オチに関わるネタバレは極力避けていますが、内容には触れています。気になる方はご注意下さい。
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ナイトスイム(配信/Prime Video)

難病に侵され早期引退を余儀なくされた元メジャーリーガーのレイ・ウォーラー。現役復帰を目指す彼は自身の理学療法も兼ねて郊外のプール付き物件を中古で購入し、妻イブや思春期の娘イジー、幼い息子エリオットとともに引っ越してくる。新たな生活を満喫する一家だったが、裏庭にあるプライベートプールは、なぜか15年も未使用のままだった。そのプールには得体のしれない怪異が潜んでおり、一家を恐怖の底へと引きずり込んでいく。

引用:映画.com
原題:Night Swim/2024年/アメリカ/98分/配給:東宝東和
監督:ブライス・マクガイア/製作:ジェームズ・ワン ジェイソン・ブラム/製作総指揮:マイケル・クリアー ジャドソン・スコット ライアン・テュレック/原案:ロッド・ブラックハースト ブライス・マクガイア/脚本:ブライス・マクガイア/撮影:チャーリー・サロフ/美術:ヒラリー・ガートラー/衣装:クリスティ・ウィッテボーン/編集:ジェフ・マケボイ/音楽:マーク・コーベン
出演:ワイアット・ラッセル/ケリー・コンドン/アメリ・ホーファーレ/ギャビン・ウォーレン
製作にジェームズ・ワン&ジェイソンブラムというホラー界の二大ビッグネームが名を連ねていることもあり、どうしても期待せざるを得ないのですが、いざ蓋を開けてみると……うーん、薄味。全年齢向きなのでゴアやスプラッタがないことは分かっているのですが、病気で療養を余儀なくされているメジャーリーガーであるお父さんの復帰への執着みたいなヒトコワの部分も含めて、ヒューマンドラマに帰結する寓話めいたお話自体があまりにも「どこかで見たことある」……というか、完全にスティーブン・キング。いや、スティーブン・キング好きよ。もはやレジェンドなんだから、影響を受けていても全然いい。でもそれだけだったら、スティーブン・キングの本や映画を楽しめばいいわけで。
怖いのが苦手なキッズやティーンが観ればいいのかな、とか考えてはみるものの、そのあたりにおすすめするには映像も話も陰気で(怖くないのに)渋すぎる。お話も地味なりにキレイにまとまっているのでツッコミどころも特になく、これといって感想が浮かんでこない状態です。復帰に取り憑かれたパパがもっとエクストリームな健康オタクになって家族を翻弄したりしたら、もうちょっとおもしろかったのかもしれません。
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パスト ライブス 再会(配信/Prime Video)

韓国・ソウルに暮らす12歳の少女ノラと少年ヘソンは、互いに恋心を抱いていたが、ノラの海外移住により離れ離れになってしまう。12年後、24歳になり、ニューヨークとソウルでそれぞれの人生を歩んでいた2人は、オンラインで再会を果たすが、互いを思い合っていながらも再びすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサーと結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっとめぐり合うのだが……。

引用:映画.com
原題:Past Lives/2023年/アメリカ・韓国合作/106分/配給:ハピネットファントム・スタジオ
監督:セリーヌ・ソン/製作:ダビド・イノホサ クリスティーン・ベイコン パメラ・コフラー/製作総指揮:マイキー・リー セリーヌ・ソン/脚本:セリーヌ・ソン/撮影:シャビアー・カークナー/美術:グレイス・ユン/衣装:カティナ・ダナバシス/編集:キース・フラース/音楽:クリス・ベアー ダニエル・ロッセン
出演:グレタ・リー/ユ・テオ/ジョン・マガロ

冒頭から構図や人物配置が技巧的で、レベルの高い作品なのだろうなということは分かる。ノスタルジックな韓国のロケーションもいいし、たぶん主人公の心情を細やかに物語っているんだろう、多彩なファッションや天候の移り変わり、ライティング等々も芸が細かないと感心することしきりでした、が。

お話はというと、まったく好きになれませんでした。理由はいろいろあるんだけど、いちばんはノラという自由すぎる主人公。初恋の人に会うのはともかくとして、そのイベントをきっかけにこれまで自分の心の奥に隠してきた不安を吐露する旦那さんに対して、あの完全にバカにしたみたいな対応はなくない? あれ男女逆だったら、たとえば女性のお家がお金持ちだったりして、女性が「わたしと結婚したのはお金のためだったのかな」とか、初恋の人とデートするって言われて「あなたの大切な人だということは分かるから行くなとは言えないけど不安」とか、ずっと我慢してきた心にくすぶるものを相手に伝えたとき「バカ言ってんじゃないよ」って一言で片付けられたら、腹立つよね? まったく誠意感じられないよね?

ノラにはいつも相手に向き合ってる感じが全然ない。それを強さみたいに描いてるふしもあるんだけど、共同作業で先へ進んでいく恋愛とか結婚ってそういうものじゃないと思うし、わたしだったらもうこの対応された時点でノーサンキュー。バーでも完全に背中向けちゃってね……別テーブルのグループに「3人の関係性がよくわからない」なんて言われて、なんなの? アーサーMなの? 羞恥プレイなの?

いくら相手が移民とはいえ、結婚も恋愛も理想とするべきは対等な関係のはず。なのにこの扱いを我慢しているあたりでアーサーのことも理解出来ないし、小学生のころ数回一緒に遊んだだけの相手をネチネチ思い詰めているヘソンに至ってはもうそれだけでごめんなさい、ちょっと気持ち悪い。すべての登場人物の気持ちが不自然に一方通行な気がして違和感しかなかったのですが、ノラを中心にふたりの男が祖国と移住先というメタファーみたくなってるんならそれも仕方ないような気がするし、でもそれだったら「祖国」の扱い、あまりに上から目線じゃない? 移民という感覚は私には分からないので正しく理解できていないかもしれないんだけど、そのあたりをもう少し深掘りしようという意欲も……うーん、沸かないなあ。でも世界レベルで絶賛された映画なので、たぶんわたしがセンスないんだと思います。いいんです。『恋するプリテンダー』も全然分からなかったし、恋愛センスは本当にゼロの自覚あるんで。

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アイズ・オン・ユー(配信のみ/Netflix)

アナ・ケンドリック主演・監督の実話に基づくスリラー!女優志望のシェリルは「デート・ゲーム 」の出演をきっかけに連続殺人犯と出会う。

引用:Filmarks
原題:Woman of the Hour/2023年/アメリカ/95分/配給:Netflix
監督:アナ・ケンドリック/製作:ロイ・リー マリ・ユーン J・D・リフシッツ ラファエル・マーグレス/製作総指揮:スチュアード・フォード ザック・ギャレット ミゲル・A・パロス・Jr. アナ・ケンドリック イアン・マクドナルド ジョー・ペナ ポール・バルボー ショーン・パトリック・オライリー マシュー・ヘルダーマン ルーク・タイラー アンドリュー・ディーン スティーブン・クロフォード/脚本:イアン・マクドナルド/撮影:ザック・クーパースタイン/美術:ブレント・トーマス/編集:アンディ・キャニー/音楽:ダン・ローマー マイク・タシーロ
出演:アナ・ケンドリック/ダニエル・ゾバット/ニコレット・ロビンソン/オータム・ベスト/ピート・ホームズ/ケリー・ジェイクル/キャサリン・ギャラガー/トニー・ヘイル

なんとアナ・ケンドリック初監督作品。本作の脚本を読んですっかり惚れ込み、どうしても自分で監督したくなったのだそう。ベースはアメリカではテッド・バンディと並んで語られることもあるという有名なシリアルキラー、ロドニー・アルカラによるフェミサイド。監督を務めることになったアナは脚本に自らの実体験などを盛り込み加筆修正し、当初より女性を蔑視する社会により深く切り込んだ、批評性の高い内容に仕上げていったとのことです。

作品には実際そういう部分がしっかりと反映されていて、冒頭のオーディションシーンからアナ演じる女優志望の主人公、シェリルは非常に腹立たしい扱いを受けます。「デートゲーム」という男3:女1のお見合い番組の現場でも、彼女は男の好みそうな服を着せられ、頭が悪いキャラクターを演じることを強要される。そんな状況にうんざりして本番では反旗を翻すシェリルだけど、シリアルキラーはそこにつけ込んでくるんですね。男たちがすっかり狼狽している中で、彼だけはシェリルをひとりの人間として見た発言をする。だからそこまでに絶望しているシェリルが、ロドニーに好感を持ってしまうのは仕方ない。

一方番組を観覧をしていた女性が、ロドニーの正体に気付きます。でも同行していたパートナーも、番組のスタッフや警備員も、誰一人彼女の訴えをちゃんと聞かない。そうこうしているあいだに放送は終了、その間際、ロドニーの異常性に気付いた男性出演者の一人がシェリルに注意を促すんだけど、シェリル的にはこの時点で彼のセクハラ発言にうんざりさせられているから(引っかかりつつも)流してしまう。このシーンはとても重要で、彼は決して悪人じゃない。むしろシェリルに危険を知らせようとする、善良な人であるともいえる。でもそんないい人にも関わらず、女性に対して見下した発言をすることにはまったく罪の意識を感じていない。だからよけいたちが悪い。この場面の一連のやりとりは、彼のようなごく普通の男性たちが常々女を絶望させていなければ、女の話にきちんと耳を傾けていれば、事態はここまで悪化しなかったんじゃない? そんな問題を突きつけてくる。

本作のキモはまさにここ。凄惨な事件は、シリアルキラーの弁が立ったからでもなく、女性が浅はかだったからでも、運が悪かったからでもなく、さらに言えば男が悪いわけでもない。悪いのは女性軽視、蔑視が常態化した社会そのものなんじゃないか。

本作でシェリルが受けるセクハラの数々は、女性なら誰しも身に覚えのあるものばかり。(恐怖のあまり)取り乱してしまっている女性をヒステリーだとか生理前なんて言って軽視することもよくあるよね。そういうものが積もり積もった末に、実は取り返しのつかないことが起こっているんじゃないか。こんな切り口を真っ向据えた作品は、少なくともわたしがこれまでに観た映画の中にはありませんでした。それを若干39歳のアナが取り上げ、地に足の付いた堂々たる演出ぶりで1本の映画に仕上げてる。これには大いに脱帽しました。そして今後の活躍もとても楽しみ。そんな期待もこめて、これは今年のベスト10入りほぼ決定。視聴可能な環境にある人はぜひ、おすすめです!!

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