いまさらですが、2025年2月に観た配信作品の感想文です。
- ゾンビーズ(U-NEXTオンライン上映)
- ナイト・オブ・アルカディアン(U-NEXTオンライン上映)
- ボーダーランズ(配信のみ/Prime Video)
- 深い谷の間に(配信のみ/Apple TV+)
上2本は「未体験ゾーンの映画たち」のラインナップ。毎年ひそかに楽しみにしている企画なのですが、2025年はシネ・リーブルからテアトルになった関係か大阪での上映が行われず。仕方がないので「U-NEXTオンライン上映」を利用しました。
本来劇場用として作られた映像作品が安易に配信となることについては賛否あるわけですが、こういうイベント上映はたいていスケジュールがタイト過ぎてなかなか劇場へは行けないので、オンラインで楽しめるのは嬉しい限りです。
他2本はケイト・ブランシェットとアニャ・テイラー=ジョイという、それぞれビッグネームの主演作品。監督も売れっ子なのにそれでも配信スルーって……何とも世知辛い世の中ですな。
ゾンビーズ(U-NEXTオンライン上映)
「カニバルゾンビ」と呼ばれる生活障がい者たちがはびこる街。ゾンビポルノが大好きなカールと、レスリングに夢中なフレディ、カールの異母姉マギーの3人のはみだし者たちは、誘拐されたおばあちゃんを救うため、極悪企業コールマン社に立ち向かうことを決意する。
引用:映画.com
監督:アヌーク・ウィッセル ヨアン=カール・ウィッセル フランソワ・シマール/製作:ロラン・ボーダン ガエル・ヌアイユ ディダール・ドメリ グレゴワール・メラン/原作:ジェリー・フリッセン ガイ・デイビス/脚本:アヌーク・ウィッセル ヨアン=カール・ウィッセル フランソワ・シマール ジェリー・フリッセン/撮影:ジャン=フィリップ・ベルニエ/音楽:ル・マトス
出演:アレクサンドル・ナチ/デレク・ジョンズ/ミーガン・ペータ・ヒル/バンサン・ルクレール/ベンツ・アントワン/クレア・コールター
『ターボキッド』や『サマー・オブ・84』を手掛けたカナダの映像制作ユニット「ROADKILL SUPERSTARS」の新作がやってきました。どちらも大好きだった私は新作というだけで楽しみなんだけど、今回はなんとゾンビもの。そんなのますます期待してしまうじゃないですか! というわけで、わりとハードル高めで観てしまったのですが……。
結論を先に言っておくと、80分という長さに比して、ちょっと内容を盛りすぎてしまった感じ。ゾンビと人間が共存する世界という設定はなかなか斬新なんだけど、ゆえにこの世界ならではの、ゾンビ回収のお仕事とは、おばあちゃんがゾンビ化するとは、ゾンビポルノって一体……など、いろいろなことにある程度の説明が必要になってくる。だから特に前半、ちょっとモタモタしちゃった感じ。
でもそのひとつひとつのアイデア自体はおもしろいし、どこまで意図されたものかは分かりませんが、人間より後発で少数派となるゾンビの扱い、たとえば――そっとしておけばおとなしいゾンビを薬物で凶暴化させたり、ゾンビに対する嫌悪感を意識的に煽る大企業の存在があったり――は、昨今の社会問題を内包しているようなところもありました。おそろしくバカなんだけど嫌いになれない主人公たちも親近感あって魅力的だし、クライマックスで大量に発生する著名人のゾンビは笑えるし、ゴア描写もまずまず頑張っていて……。
基本的には好き。だけどもったいない。そんな感じの映画です。ユルい映画を楽しみたい気分のときや、これまでのRKSS作品が好きならそれなりには楽しめるとは思うのですが、かゆいところに手の届かないもどかしさや、後半随所に目立つ低予算感は、あたたかく見守る広い心が必要になるかもしれません。
こちらはRSKKの新作、今度はスラッシャー映画とのこと。カナダやアメリカではすでに公開済みということですが、いつか日本でもやるかしら。規模、評判的に配信スルーかなとは思うのですが楽しみです!
ナイト・オブ・アルカディアン(U-NEXTオンライン上映)
ポールと双子の息子トーマス&ジョセフは、夜になると現れる恐ろしい怪物から身を守りながら暮らしていた。ある日、日没になってもトーマスが帰らず、ポールは危険を承知で外へ捜しに向かうが、重傷を負ってしまう。トーマスとジョセフは父を守るため、サバイバル技術を駆使して恐怖の夜を乗り越えようとするが……。
引用:映画.com
監督:ベンジャミン・ブリューワー/製作:デビッド・M・ウールフ アリアンヌ・フレイザー デルフィーヌ・ペリエ ニコラス・ケイジ マイク・ナイロン バクストン・ポープ/製作総指揮:ヘンリー・ウィンタースターン マクダラ・ケレハー ジェイク・バン・ワーグナー スラバ・ブラディミロフ ジャレッド・アンダーウッド アンドリュー・C・ロビンソン/脚本:マイク・ナイロン/撮影:フランク・モビリオ/美術:シェーン・マッケンロー/編集:クリスティ・シメック/衣装:グウェン・ジェファーズ/音楽:ル・マトス/キャスティング:ニーリー・アイゼンシュタイン
出演:ニコラス・ケイジ/ジェイデン・マーテル/マックスウェル・ジェンキンス/セイディ・ソブラル
ボーダーランズ(配信/Prime Video)
謎めいた過去をもつ悪名高き賞金稼ぎリリスは、アトラスから行方不明になった娘の捜索を依頼され、銀河系で最も混沌とした惑星とされる故郷パンドラに仕方なく戻ってくる。傭兵ローランドや放浪の爆弾魔タイニー・ティナ、ティナの守護者クリーグ、風変わりな天才科学博士タニス、ロボットのクラップトラップと同盟を結んだリリスは、アトラスの娘の捜索と惑星パンドラに秘められた謎を明らかにするべく、危険に満ちた冒険の旅に出る。
引用:映画.com
監督:イーライ・ロス/製作:アリ・アラド アビ・アラド エリック・フェイグ/製作総指揮:ティム・ミラー イーサン・スミス ルイーズ・ロズナー エミー・ユー ルーシー・キタダ クリストファー・ウッドロウ K・ブレイン・ジョンストン ランディ・ピッチフォード ストラウス・ゼルニック/原案:イーライ・ロス/脚本:イーライ・ロス/撮影:ロジェ・ストファーズ/美術:アンドリュー・メンジース/編集:ジュリアン・クラーク エバン・ヘンケ/衣装:ダニエル・オーランディ/音楽:スティーブ・ジャブロンスキー/音楽監修:トリッゲ・トーベン/キャスティング:ビクトリア・トーマス
出演:ケイト・ブランシェット/ケビン・ハート/ジャック・ブラック/エドガー・ラミレス/アリアナ・グリーンブラット/フロリアン・ムンテアヌ/ジャニナ・ガバンカー/ジーナ・ガーション/ジェイミー・リー・カーティス
監督もいい。役者もいい。かなり気合いの入った大作として企画されたんだろうけど、蓋を開けてみれば配信スルー。とりあえず観てはみましたが、なんだろう……盛りすぎなのかな。原作のゲームを知らないので、なんとも言えないのですけれども。
冒頭の世界観からディストピアものかと思いきや、ちょっと複雑なSF設定があるみたいだし、登場人物もやたら多いし、彼らのバックボーンもややこしいし、アクションもところどころ入れないと飽きちゃうし、ゲーム原作ならぜったい何かとあるだろう、独自の設定とかガジェットも見せていかないといけないし……なんかいろいろな要素がひしめきあってるのは分かるんだけど、それがうまくメインの筋立てに収束されていかない感じ。キャラクターに関しても、役者は一流だし、個性的な衣装やメイクはとてもよくできているのに、まったく魅力が感じられなくて……。
イーライ・ロスはすごく才能のある映画監督だと思うのですが、彼はもう少しミクロな視点で描く作品の方が向いているのかもしれません。個人的にはずっと『サンクスギビング』みたいなやつを作っててくれたらいいのですが、本人には本人のやりたいことがあるのでしょうね。次に何を手掛けるのかは分かりませんが、とりあえずやれば観るつもりです。
深い谷の間に(配信のみ/Apple TV+)
安易に足を踏み入れることができない山間に、広大で深い渓谷があった。渓谷の東と西には、谷を見守るように、それぞれ監視塔が建てられている。ある時、その東西の監視塔に、別々に極秘任務を与えられた敏腕スナイパーのリーヴァイとドラーサが配置される。外部との連絡手段は断たれ、監視塔同士の連絡も禁止されているなか、詳細も知らないまま任務に就いた2人。やがて彼らは、自分たちの任務が、谷を守るということではなく、谷の中に潜む、ある“秘密”から世界を守ることだと知る。
引用:映画.com
監督:スコット・デリクソン/製作:デビッド・エリソン ダナ・ゴールドバーグ ドン・グレンジャー スコット・デリクソン C・ロバート・カーギル シェリル・クラーク アダム・コルブレナー ザック・ディーン グレゴリー・グッドマン/製作総指揮:マイルズ・テラー/脚本:ザック・ディーン/撮影:ダン・ローストセン/音楽:トレント・レズナー アティカス・ロス
出演:マイルズ・テラー/アニャ・テイラー=ジョイ/シガニー・ウィーバー/ショペ・ディリス
マイルズ・テラーにアニャ・テイラー=ジョイという、今が旬の2大スターを贅沢に起用したわりには後半あまりにも尻すぼみ。2人してそれぞれ伝説になるレベルのアクション映画に出演していることもあり、どうしても比べてしまうのも始末が悪い。でも私、スコット・デリクソンはわりと好きな監督なんだけどな。ちょっと風変わりで意表を突く映画を撮る人ではあるけれど、それにしても何とも言えない「コレジャナイ」感はなんだろう。
考えた末の結論は、脚本が違う人だから。本作の脚本を手掛けたザック・ディーンという人は、『トゥモロー・ウォー』とか『デッドフォール』の人らしい。うーむ、ちょっと納得した。だったら仕方あるまい。
よかったところもまったくないわけではなくて、ダン・ローストセン(『シェイプ・オブ・ウォーター』『カラーパープル(2024)』他)の深みのある撮影はみごとでした。ルックに関しては最初から最後まで素晴らしいので、美しいロケーションに佇むマイルズ・テラーやアニャちゃんをただひたすら眺めているだけで幸せという人にとっては、じゅうぶん料金分の価値があると思います。