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しあわせな選択(TOHOシネマズ梅田)
製紙会社に勤めるごく普通のサラリーマンのマンスは、妻と2人の子ども、2匹の飼い犬と暮らし、すべてに満ち足りていると思っていた。しかしある時、25年勤めた会社から突然解雇されたことで事態は一変。1年以上続く就職活動は難航し、愛着ある自宅も手放さざるを得ない状況に陥ってしまう。追い詰められたマンスは成長著しい製紙会社に飛び込みで履歴書を持ち込むも、そこでも無下に断られてしまう。自分こそがその会社に最もふさわしい人材だと確信するマンスは、ある決断を下す。それは、人員に空きがないなら自分で作るしかないというものだった。
引用:映画.com
原作が「悪党パーカー」シリーズのドナルド・E・ウェストレイクと聞いて、ステイサムの如く無双するイ・ビョンホンが脳裏をかすめたが、そういう話ではまったくなかった。本作の主人公はごく普通……よりも(冒頭描かれるその生活振りから)おそらくそれなりに上位クラスのサラリーマン。そんな彼がある日突然会社をクビになり、これまでの生活を維持できなくなる恐怖から、再就職でライバルになりそうな人間を殺すことを思いつく。ただしごく普通の人なので当然ステイサムのようにスマートにいくことはなく、どんどん収拾の付かない事態となっていき……。
って、いかにも韓国映画らしいブラック・コメディだなと思ったが、テーマ的なところは完全に原作準拠のようだ。聞けば2005年にはフランスでも映画化されているとのことなので(タイトルは『le couperet』、監督はなんと『ミッシング』のコスタ=ガヴラス、現状日本では視聴不可)、もともと皮肉を愛する国で好まれるテイストなのだろう。
資本主義や家父長制を批判するストーリーそのものに目新しさはないが、パク・チャヌクの手に掛かるとこうも笑えるものになるのかというくらい、いろいろなシーンがおもしろかった。とりわけ中盤の夫婦vs.イ・ビョンホンは畳みかけるクドさが白眉。久しぶりに劇場で、ちょっと困るくらい笑いが止まらないという経験をした。ソン・イェジン演じる妻の、絶妙に生々しい女っぷりもいい。
ナースコール(なんばパークスシネマ)
州立病院で働く、献身的でプロ意識の高い看護師フロリア。この日は同僚が病欠しており、遅番シフトはいつも以上に忙しい。満床病棟で、看護学生の教育もしなければならない。そんな状況のなかでも、不安や孤独を抱える患者たちに誠実に接するフロリアだったが、とても手に負えない事態に陥っていき、やがて重大な試練に直面する。
引用:映画.com
人員の足りない病院で、看護師である主人公に次々と課せられるタスクをスリリングに見せていく。なにかひとつでも手順を間違えれば患者の死に繋がる可能性が高いので、それだけである程度の緊張感が持続するのだが、とはいえ92分間舞台は病院内のみ。ほぼ変化しないロケーションで、飽きさせず、必要以上に混乱させず、ひたすら看護師という仕事の物理的、あるいは精神的な過酷さを訴えるのかと思いきや、一見わがままなばかりに見える患者やその家族たちの、「病」という不測の事態を受け止めきれない複雑な心の内までをフラットに描き、さらにはラストにフッと優しい気持ちになれるスマートなオチまでついている。
日頃から忘れないようにしたいと思っている医療従事者の方への感謝の気持ちをあらためて抱いたのはもちろんだが、それと同じくらい、この映画のすさまじい情報整理力に感嘆した。構図、編集等々で、私には一度観ただけでは理解できないくらいの細かな工夫がされているのだろう。
各方面引っ張りだこの人気者、レオニー・ベネシュの、強さや優しさ、感受性が豊かだからこその繊細さが交錯する演技も素晴らしかった。今のところ、2026年の10本に入るかもしれないくらい刺さっている。
俺たちのアナコンダ(TOHOシネマズ梅田)
少年時代から映画を愛してきた幼なじみのダグとグリフは、1997年公開のパニックスリラー映画「アナコンダ」をバイブルとして崇めていた。40代を迎えた現在、ダグは映画監督の夢を諦めて結婚式カメラマンの仕事に従事し、グリフは売れない俳優として暮らしている。ある日、地元のパーティで再会した2人は、長年の夢だった「アナコンダ」のリメイク版を自主制作するべく立ち上がる。友人たちを引き連れて南米アマゾンへ向かった彼らは、低予算ながらも順調に撮影を進めていくが、グリフが誤って主役のヘビを殺してしまうトラブルが発生。代役のヘビを探そうとジャングル奥地へ足を踏み入れたものの、そこには巨大なアナコンダが潜んでいた。
引用:映画.com
ひたすらバカバカしく、くだらない映画だった!!(褒め言葉)
ジャック・ブラックは日本でもそれなりに知名度が高く、出演作品もある程度公開されている。ただ最近は子供~ファミリー向けのタイトルが多かった。今作のテーマでもあるミドルエイジクライシスに関しては、それらの作品でもサブ的なポジションで扱われてきたが、下ネタは難しかったのだろう。そのあたりが思う存分発散されている。とことん偏差値が低くて大変よろしい。
漫才のような会話とコントのようなシチュエーションを見せることがメインであり、ホラー要素がほぼないあたり「アナコンダ」というキーワードに惹かれると拍子抜けするが、ジャック・ブラックにポール・ラッドだからそこは仕方なし。オリジナルキャストのカメオ出演が自然で、全員楽しそうで癒やされた。
これから観る人がもしこの記事を読んでいたら、1997年の1作目だけでいいからオリジナルの『アナコンダ』を観ておくことをおすすめする。観ていなくても話は理解できると思うが、メタ構造なので、どうしても「元ネタを知っているから笑える」というポイントが多くなっている。
ハムネット(大阪ステーションシティシネマ)
16世紀イングランドの小さな村。薬草の知識を持ち不思議な力を宿したアグネス・シェイクスピアは、作家としてロンドンで活動する夫ウィリアムが不在のため、3人の子どもたちと暮らしている。ペスト禍のなかで子どもたちを守り奮闘するアグネスだったが、不運にも11歳の息子ハムネットが命を落とし、家族は深い悲しみに包まれる。
引用:映画.com
マギー・オファーレルによるベストセラーを原作に、絵画のように美しいウカシュ・ジャルの撮影、マウゴシャ・トゥルジャンスカによる衣装、ジェシー・バックリーの熱演に加えてエモーションのキモとなる子役の演技も素晴らしく、隙のない傑作だとは思うのだが。
ちょっとその完璧さを息苦しく感じてしまうところもあり、好き嫌いとなると微妙だった。もともとメロドラマが苦手なので、クライマックスの、世界がアグネスとウィリアムのためだけのものになるような演出に醒めてしまった上に、そもそも「ハムレット」ってかなり下世話で陰湿な話ではなかったか。あんまりこういう「いい話」と結びつけづらいような気もしたが……シェイクスピアに詳しいわけではないのでこのへんは私の勉強不足、想像力不足だろう。
クロエ・ジャオの『ザ・ライダー』や『ノマドランド』は大好きなんだが。
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