2025年4月に観た新作映画の感想を書いています。
- ベイビーガール(大阪ステーションシティシネマ)
- ミッキー17(大阪ステーションシティシネマ)
- ロングレッグス(大阪ステーションシティシネマ)
- ベテラン 凶悪犯罪捜査班(大阪ステーションシティシネマ)
- アマチュア(TOHOシネマズ梅田)
- プロフェッショナル(TOHOシネマズなんば)
ぼやっとしているあいだに6月になってしまいました。
いまさら4月公開の映画の感想なんて誰が見るのよ……というわけで、今回の感想はいつも以上に簡潔に、自分用のメモとしてまとめてます。
いちばん気に入ったのは『プロフェッショナル』かなあ。リュ・スンワン監督の『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』も安定の楽しさでした。
あと4月は、配信作品の感想文はありません。最近ドラマが渋滞していて、家ではそっちで手一杯です。
ベイビーガール(大阪ステーションシティシネマ)
ニューヨークでCEOとして成功を収めたロミーは、舞台演出家の夫ジェイコブや子どもたちに囲まれ、誰もが羨むような生活を送っていた。ある時、ロミーはインターンの青年サミュエルから目が離せなくなる。サミュエルは彼女の中に眠っていた欲望を見抜いて挑発を仕掛けてくる。行き過ぎた駆け引きをやめさせようとサミュエルに会いに行くロミーだったが、逆に主導権を握られ、2人のパワーバランスは逆転していく。
引用:映画.com
監督:ハリナ・ライン/製作:ダビド・イノホサ ジュリア・オー/脚本:ハリナ・ライン/撮影:ヤスペル・ウルフ/美術:スティーブン・カーター/衣装:カート&バート/編集:マット・ハンナム/音楽:クリストバル・タピア・デ・ビール
出演:ニコール・キッドマン/ハリス・ディキンソン/アントニオ・バンデラス/ソフィー・ワイルド/エスター・マクレガー
正直それほど興味のある題材ではなかったのですが、ハリナ・ライン監督が影響を受けたと言及している『危険な情事』や『ナインハーフ』、『氷の微笑』『ピアニスト』『アイズ・ワイド・シャット』あたりはドンピシャ世代。当時それなりに楽しんで観たこともあって、劇場へと出向きました。
ただ感想は……というと、うーん……言及タイトルの作品群に比べると、脚本も演出も圧倒的に弱い。やりたいことは分かるのだけど、特殊な性癖についても、家族が崩壊していく過程に関しても、どうにもぼんやりしていて深刻さがいまいち伝わりませんでした。まあキューブリック、バーホーヴェン、ハネケと比べてしまうとさすがに気の毒なんですが、スリラーとしての緊張感が足りないんじゃないかと思います。たぶん。
ミッキー17(大阪ステーションシティシネマ)
失敗だらけの人生を送ってきた男ミッキーは、何度でも生まれ変われる“夢の仕事”で一発逆転を狙おうと、契約書をよく読まずにサインしてしまう。しかしその内容は、身勝手な権力者たちの命令に従って危険な任務を遂行し、ひたすら死んでは生き返ることを繰り返す過酷なものだった。文字通りの使い捨てワーカーとして搾取され続ける日々を送るミッキーだったが、ある日手違いによりミッキーの前に彼自身のコピーが同時に現れたことから、彼は反撃に出る。
引用:映画.com
監督:ポン・ジュノ/製作:デデ・ガードナー ジェレミー・クライナー ポン・ジュノ チェ・ドゥホ/製作総指揮:ブラッド・ピット ジェシー・アーマン ピーター・ドッド マリアンヌ・ジェンキンス/原作:エドワード・アシュトン/脚本:ポン・ジュノ撮影:ダリウス・コンジ/美術:フィオナ・クロンビー衣装:キャサリン・ジョージ/編集:ヤン・ジンモ/音楽:チョン・ジェイル/視覚効果監修:ダン・グラス
出演:ロバート・パティンソン/ナオミ・アッキー/スティーブン・ユァン/アナマリア・バルトロメイ/トニ・コレット/マーク・ラファロ/パッツィ・フェラン/キャメロン・ブリットン
ロングレッグス(大阪ステーションシティ
1990年代のオレゴン州。FBIの新人捜査官リー・ハーカーは、上司から未解決連続殺人事件の捜査を任される。10の事件に共通しているのは、父親が家族を殺害した末に自殺していること。そしてすべての犯行現場に、暗号を使って記された「ロングレッグス」という署名入りの手紙が残されていた。謎めいた手がかりをもとに、少しずつ事件の真相に近づいていくリーだったが……。
引用:映画.com
監督:オズグッド・パーキンス/製作:ダン・ケイガン ブライアン・カバナー=ジョーンズ ニコラス・ケイジ デイブ・キャプラン クリス・ファーガソン/製作総指揮:ジェイソン・クロス アンドレア・ブッコー ロニー・エスクレイ ローレンス・ミニコン シーン・クライェスキ デビッド・ジェンドロン リズ・デストロ トム・クイン ジェイソン・ウォルド クリスチャン・パークス テディ・シュワルツマン ジョン・フリードバーグ ローラ・オースティン=リトル ジェシー・サバス フレッド・バーガー/脚本:オズグッド・パーキンス/撮影:アンドレス・アローチ・ティナヘロ/美術:ダニー・バーメット/衣装:マイカ・ケイド/編集:グレッグ・ン グレアム・フォーティン/音楽:ジルギ/キャスティング:マーク・ベネット
出演:マイカ・モンロー/ニコラス・ケイジ/ブレア・アンダーウッド/アリシア・ウィット/ミシェル・チョイ=リー/ダコタ・ダルビー/ローレン・アカラ/キーナン・シプカ
スリラー、またはミステリーっぽい雰囲気で始まるのですが、主人公に超能力的なものがあったり、起こる事件の裏になにか超常的な存在の気配があったり。どういう話なのか最初はいまいち分からないのですが、たぶんそこも楽しみながら観る前提で作られた作品です。
アート映画のようなこだわりの感じられるルックや、『羊たちの沈黙』『ゾディアック』『CURE』『シャイニング』等々へのオマージュ、かなり話題になったニコラス・ケイジの怪演などパーツパーツは本当に楽しんだのですが、映画としておもしろかったのかと言われると、うーん……なんだかちょっと物足りないというか。思わせぶりな記号に振り回されたわりにはいまいちパッとしない。雰囲気が重々しいだけに期待してしまったというのもあるんだけど、なんかもうちょっと驚かされたかった。決してつまらないわけではないのだけど……そんな感じです。
ベテラン 凶悪犯罪捜査班(大阪ステーションシティシネマ)
法では裁かれない悪人を標的にした連続殺人事件が発生。不条理な司法制度に不満を抱えていた世論は、犯人のことを善と悪を裁く伝説の生き物「ヘチ」と呼び、正義のヒーローとしてもてはやすようになる。熱血ベテラン刑事ソ・ドチョルと凶悪犯罪捜査班、さらにドチョルに心酔する新人刑事パク・ソヌも捜査に加わり、事件は解決に近づくかに見えた。しかし犯人は刑事たちをあざ笑うかのように、次の標的を名指しする予告をインターネット上に公開する。
引用:映画.com
監督:リュ・スンワン/脚本:リュ・スンワン イ・ウォンジェ/撮影:チェ・ヨンファン/音楽:チャン・ギハ
出演:ファン・ジョンミン/チョン・へイン/アン・ボヒョン/オ・ダルス/チャン・ユンジュ/オ・デファン/キム・シフ/シン・スンファン
安定のリュ・スンワン監督作品、今回も大変楽しゅうございました。しかもただ楽しいだけじゃなく、警察すらさじを投げる「圧倒的な悪」をチームワークで追い詰めていくシリーズ1作目『ベテラン』と対を成すかのように、今回の敵は自警団的な存在。法で裁けないクズに制裁を加えるのってなんならヒーロー的でもあるけど、それってどうなのというところを詰めていきます。つまり勧善懲悪という前作からの安定のひな形を捨てて、ともすれば地味で暗くなりがち(実際ダークではある)な主題を敢えて掲げるという……さすがの骨太さです。
内容の方はというと、クライマックスこそ大がかりな処刑セットがいつのまにか出来ていたり、いよいよとなると仲間がサクッと手を回していたり。そのへんはやや唐突な気がしなくもなかったのですが、ドチョルが犯人を生きて逮捕することにとことんこだわることでテーマもしっかり立っていたと思うし、そこに自然に笑いや見ごたえのあるアクション、シリーズには欠かせないチームプレイも盛り込んでの120分は素晴らしい。
誰が観ても必ず楽しめるエンターテイメントなので、今日の夜観る映画を探している方はぜひ。前作を観ていなくても大丈夫ではありますが、エンタメ度は前作の方が高いので、できればそこから観た方がキャラクターへの親近感も増して、楽しいとは思います。
アマチュア(TOHOシネマズ梅田)
内気な性格で愛妻家のチャーリー・ヘラーは、CIA本部でサイバー捜査官として働いているが、暗殺の経験もないデスクワーカーだ。最愛の妻とともに平穏な日々を過ごしていたが、ある日、無差別テロ事件で妻を失ったことで、彼の人生は様変わりする。テロリストへの復讐を決意したチャーリーは、特殊任務の訓練を受けるが、教官であるヘンダーソンに「お前に人は殺せない」と諭されてしまう。組織の協力も得られない中、チャーリーは彼ならではの方法でテロリストたちを追い詰めていくが、事件の裏には驚くべき陰謀が潜んでいた。
引用:映画.com
監督:ジェームズ・ホーズ/製作:ハッチ・パーカー ダン・ウィルソン ラミ・マレック ジョエル・B・マイケルズ製作総指揮:J・J・フック/原作:ロバート・リテル/脚本:ケン・ノーラン ゲイリー・スピネッリ/撮影:マーティン・ルーエ/美術:マリア・ジャーコビク/衣装:スージー・ハーマン ジョナサン・エイモス/音楽:フォルカー・ベルテルマン
出演:ラミ・マレック/レイチェル・ブロズナハン/カトリーナ・バルフ/ジョン・バーンサル/マイケル・スタールバーグ/ホルト・マッキャラニー/ジュリアンヌ・ニコルソン/エイドリアン・マルティネス/ダニー・サパーニ/ローレンス・フィッシュバーン
ロバート・リテルによる1981年上梓の人気スパイ小説『チャーリーヘラーの復讐』が原作。同じく1981年の映画『ザ・アマチュア』のリメイクとなります。私は原作未読、映画はなにげにキャストが豪華(ジョン・サヴェージにクリストファー・プラマー)で気になっていたのですが、観たことはないです。
スパイ映画は派手より渋めが好きなので期待していましたが、蓋を開けてみたらわりと普通のハリウッドアクション映画。ラミ・マレックのルックスはCIAの裏方にぴったりで、ガテン系じゃないけど頭がいいから爆弾はすぐに作れるようになったり、YouTubeを見ながら鍵開けに苦戦するあたりとても楽しかったのですが、話が進めば進むほど大味な展開になっていって、ちょっと消化不良でした。大好きなジョン・バーンサルが、思わせぶりに出てきたにもかかわらず何をさせたかったのかまったく謎だったのもなんだかなあ。
でもこのモヤモヤはたぶん、あらすじから連想した好みの要素に私が勝手に過度な期待を抱いていたから。暇な週末にサクッと観るなら、そんなに悪くない作品だと思います。
プロフェッショナル(TOHOシネマズなんば)
1970年代、北アイルランド。長年にわたり殺し屋として暗躍してきたフィンバー・マーフィーは引退を決め、海辺の町グレン・コルム・キルで正体を隠しながら静かに暮らしていた。そんなある日、首都ベルファストで爆破テロ事件を起こしたアイルランド共和軍(IRA)の過激派グループが町に逃げ込んでくる。彼らのひとりが地元の少女を虐待していると知ったフィンバーは少女を助けるために制裁を下し、テロリストたちと対立することに。後戻りできない状況に追い込まれたフィンバーはテロリストたちを完全制圧するべく、命懸けの戦いに身を投じていく。
引用:映画.com
監督:監督:ロバート・ロレンツ/製作:フィリップ・リー マーカス・バーメットラー ボニー・ティマーマン キーラン・コリガン ジェラルディン・ヒューズ テリー・ローン/製作総指揮:ロバート・ロレンツ マーク・ジェイコブソン ビクター・ハディダ エフド・ブライベルグ ニコラス・ベネット ダニー・ディムボート/脚本:マーク・マイケル・マクナリー テリー・ローン/撮影:トム・スターン/美術:デレク・ウォレス/衣装:レオニー・プレンダーガスト/編集:ジェレマイア・オドリスコル/音楽:ディエゴ・バルデンベーク ノラ・バルデンベーク リオネル・バルデンベーク/キャスティング:ルイーズ・キーリー カレン・スカリー
出演:リーアム・ニーソン/ケリー・コンドン/ジャック・グリーソン/キアラン・ハインズ/デズモンド・イーストウッド/コルム・ミーニー
やっつけ感のある邦題とポスターからいつものやつかと思いきや、実は激シブの西部劇。ストーリーは当然型どおりのシンプルさですが、冒頭で悪役視点のエピソードを見せ、正義と悪の曖昧さを提示することで現代的なテーマのトッピングも施されています。
際立っていたのはキャストの好演で、穏やかそうに見えて時折殺しを生業にしてきた人間の狂気がちらつくリアーアム・ニーソンはもちろん、『イニシェリン島の精霊』でも魅力的だったケリー・コンドン、田舎町の保安官がこれ以上なくらいぴったりはまっていたキアラン・ハインズ、人なつっこい雰囲気が好印象過ぎて登場の瞬間から先行きが不安になる若い殺し屋、ジャック・グリーソン……全員腕もあるし、それぞれ役にもぴったりはまっていて、ある程度先の読めるストーリーにも観る者をぐっと引き込む吸引力になっていたと思います。
あとロケーションや撮影もよかった。撮影はロバート・ロレンツ監督と同じイーストウッド組出身のトム・スターン。『ミスティック・リバー』や『グラン・トリノ』など多くのイーストウッド作品を手掛けていて、パキッとしてるんだけど決して安っぽくなくむしろ硬質、本作の舞台となったアイルランドの景観とも相性ばっちりで、観光映画としても行けるのではないかと思うほど美しかったです。